2012年2月25日土曜日

大日本帝国憲法入門(17)

こんばんは。今日は第48条から第54条まで解説します。



第48条 両議院ノ会議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議二依リ秘密会ト為スコトヲ得

(口語訳)両議院の会議は公開する。ただし政府の要求またはその議院の決議によって秘密会とすることができる。


 原則として、議会の審議は公開されます。法律などの臣民の権利義務に関わる規範を定めるのが帝国議会の役割ですから、公開するのが審議の公正を保つ方策の一つと考えられています。ただし、案件によっては公開が適切でないものもありますので、このような場合には秘密会とすることができます。



第49条 両議院ハ各々天皇二上奏スルコトヲ得

(口語訳)両議院はそれぞれ天皇に上奏することができる。


 両議院はそれぞれ、天皇に対して請願などの上奏をすることができます。



第50条 両議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得

(口語訳)両議院は臣民から提出される請願書を受け取ることができる。


 両議院は臣民から法律の制定についてその他請願を受理することができます。もちろん、受理する義務を定めるのみで、それを実施する義務まで定めるものではありません。



第51条 両議院ハ此ノ憲法及議院法二掲クルモノノ外内部ノ整理二必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得

(口語訳)両議院は憲法や議院法に定めるものの他、内部の審理等に必要な諸規則を定めることができる。


 両議院は憲法や議院法のようないわゆる法律の形式によるものの他に、規則の形式で議事などについての規則を制定できます。規則とは、法律と異なり、一般の国民の権利義務に関わらない、議会の内部事項に関わる規範のことを指します。



第52条 両議院ノ議員ハ議院二於テ発言シタル意見及表決二付院外二於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律二依リ処分セラルヘシ

(口語訳)両議院の議員は議院において発言した意見や表決について、議院以外の場において責任を問われることはない。ただし、議員が自分でその意見を演説したり、出版するなどの方法で公にした場合は、一般の法律によって処分される。


 これは、議院の審理過程において処分すべき事象は議院の処分に任せ、議事の審議の公正を保つため、原則として議員の発言などは議院以外によっては責任を問われることはない、という趣旨です。

 審議の過程においては、発言内容によっては名誉毀損や侮辱などの責任を追及される場合も出てきます。しかし、十分な審理を尽くすためには時として、このような事柄を気にせず、思い切った発言をせねばならないこともあります。

 そこで、議員の発言がこのような不法行為などに当る場合でも、裁判などで責任を追及されるのではなく、あくまで議院の内部での処分に委ねられるという特権を与えることとしたのです。

 ただし、議員が自ら自己の意見を出版などの形で議院外に公にした場合は、この特権を放棄したものとして、法律により裁判などで処罰を受けるなどすることとなります。




第53条 両議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内乱外患二関ル罪ヲ除ク外会期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルルコトナシ

(口語訳)両議院の議員は現行犯罪または内乱外患に関わる罪を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されることはない。


 いわゆる議員の不逮捕特権を定めたものです。特に野党の議員に対しては、政府は時に、都合の悪い言論を封殺するためその議員を逮捕するなどの行為に及ぶことがあります。

 そこで、言論の自由を守り、議事の公正をも保障するため、有罪であることが比較的明らかである現行犯罪、及び逮捕の必要性がその性質上大きい内乱外患罪を除いては、会期中にはその議院の許諾がなければ逮捕できないこととしたのです。



第54条 国務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院二出席シ及発言スルコトヲ得

(口語訳)国務大臣及び政府委員はいつでも各議院に出席して、発言することができる。


 明文にはありませんが、憲法習律上、議院内閣制を採っていることの現れとして、国務大臣や政府委員は議員の資格がなくとも、各議院に出席し、発言することができます。これにより、議会と政府との意思の疎通を活発にし、法案審議などを円滑にすることができます。



 次回は「第四章 国務大臣及枢密顧問」に入ります。ヾ(o゚ω゚o)ノ゙




 このブログはこちらからの転載です → 『大日本帝国憲法入門』




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