「典」
皇室典範(明治典範)
明治二十二年二月十一日制定
天佑ヲ享有シタル我カ日本帝國ノ寶祚ハ萬世一系歴代繼承シ以テ朕カ躬ニ至ル惟フニ祖宗肇國ノ初大憲一タヒ定マリ昭ナルコト日星ノ如シ今ノ時ニ當リ宜ク遺訓ヲ明徴ニシ皇家ノ成典ヲ制立シ以テ丕基ヲ永遠ニ鞏固ニスヘシ茲ニ樞密顧問ノ諮詢ヲ經皇室典範ヲ裁定シ朕カ後嗣及子孫ヲシテ遵守スル所アラシム
御名御璽
明治二十二年二月十一日
皇 室 典 範
第一章 皇位繼承
第一條 大日本國皇位ハ祖宗ノ皇統ニシテ男系ノ男子之ヲ繼承ス
第二條 皇位ハ皇長子ニ傳フ
第三條 皇長子在ラサルトキハ皇長孫ニ傳フ皇長子及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇次子及其ノ子孫ニ傳フ以下皆之ニ例ス
第四條 皇子孫ノ皇位ヲ繼承スルハ嫡出ヲ先ニス皇庶子孫ノ皇位ヲ繼承スルハ皇嫡子孫皆在ラサルトキニ限ル
第五條 皇子孫皆在ラサルトキハ皇兄弟及其ノ子孫ニ傳フ
第六條 皇兄弟及其ノ子孫皆在ラサルトキハ皇伯叔父及其ノ子孫ニ傳フ
第七條 皇伯叔父及其ノ子孫皆在ラサルトキハ其ノ以上ニ於テ最近親ノ皇族ニ傳フ
第八條 皇兄弟以上ハ同等内ニ於テ嫡ヲ先ニシ庶ヲ後ニシ長ヲ先ニシ幼ヲ後ニス
第九條 皇嗣精神若ハ身體ノ不治ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シ前數條ニ依リ繼承ノ順序ヲ換フルコトヲ得
第二章 踐祚即位
第十條 天皇崩スルトキハ皇嗣即チ踐祚シ祖宗ノ神器ヲ承ク
第十一條 即位ノ禮及大嘗祭ハ京都ニ於テ之ヲ行フ
第十二條 踐祚ノ後元號ヲ建テ一世ノ間ニ再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制ニ從フ
第三章 成年立后立太子
第十三條 天皇及皇太子皇太孫ハ滿十八年ヲ以テ成年トス
第十四條 前條ノ外ノ皇族ハ滿二十年ヲ以テ成年トス
第十五條 儲嗣タル皇子ヲ皇太子トス皇太子在ラサルトキハ儲嗣夕ル皇孫ヲ皇太孫トス
第十六條 皇后皇太子皇太孫ヲ立ツルトキハ詔書ヲ以テ之ヲ公布ス
第四章 敬稱
第十七條 天皇太皇太后皇太后皇后ノ敬稱ハ陛下トス
第十八條 皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王ノ敬稱ハ殿下トス
第五章 攝政
第十九條 天皇未タ成年ニ達セサルトキハ攝政ヲ置ク
天皇久キニ亘ルノ故障ニ由リ大政ヲ親ラスルコト能ハサルトキハ皇族會議及樞密顧問ノ議ヲ經テ攝政ヲ置ク
第二十條 攝政ハ成年ニ達シタル皇太子又ハ皇太孫之ニ任ス
第二十一條 皇太子皇太孫在ラサルカ又ハ未タ成年ニ達セサルトキハ左ノ順序ニ依リ攝政ニ任ス
第一 親王及王
第二 皇后
第三 皇太后
第四 太皇太后
第五 内親王及女王
第二十二條 皇族男子ノ攝政ニ任スルハ皇位繼承ノ順序ニ從フ其ノ女子ニ於ケルモ亦之ニ準ス
第二十三條 皇族女子ノ攝政ニ任スルハ其ノ配偶アラサル者ニ限ル
第二十四條 最近親ノ皇族未タ成年ニ達セサルカ又ハ其ノ他ノ事故ニ由リ他ノ皇族攝政ニ任シタルトキハ後來最近親ノ皇族成年ニ達シ又ハ其ノ事故既ニ除クト雖皇太子及皇太孫ニ對スルノ外其ノ任ヲ讓ルコトナシ
第二十五條 攝政又ハ攝政タルヘキ者精神若ハ身體ノ重患アリ又ハ重大ノ事故アルトキハ皇族會議及樞密顧問ノ議ヲ經テ其ノ順序ヲ換フルコトヲ得
第六章 太傅
第二十六條 天皇未夕成年ニ達セサルトキハ太傅ヲ置キ保育ヲ掌ラシム
第二十七條 先帝遺命ヲ以テ太傅ヲ任セサリシトキハ攝政ヨリ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シ之ヲ選任ス
第二十八條 太傅ハ攝政及其ノ子孫之ニ任スルコトヲ得ス
第二十九條 攝政ハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シタル後ニ非サレハ太傅ヲ退職セシムルコトヲ得ス
第七章 皇族
第三十條 皇族ト稱フルハ太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王ヲ謂フ
第三十一條 皇子ヨリ皇玄孫ニ至ルマテハ男ヲ親王女ヲ内親王トシ五世以下ハ男ヲ王女ヲ女王トス
第三十二條 天皇支系ヨリ入テ大統ヲ承クルトキハ皇兄弟姉妹ノ王女王タル者ニ特ニ親王内親王ノ號ヲ宣賜ス
第三十三條 皇族ノ誕生命名婚嫁薨去ハ宮内大臣之ヲ公告ス
第三十四條 皇統譜及前條ニ關ル記錄ハ圖書寮ニ於テ尚蔵ス
第三十五條 皇族ハ天皇之ヲ監督ス
第三十六條 攝政在任ノ時ハ前條ノ事ヲ攝行ス
第三十七條 皇族男女幼年ニシテ父ナキ者ハ宮内ノ官僚ニ命シ保育ヲ掌ラシム事宜ニ依リ天皇ハ其ノ父母ノ選擧セル後見人ヲ認可シ又ハ之ヲ敕選スヘシ
第三十八條 皇族ノ後見人ハ成年以上ノ皇族ニ限ル
第三十九條 皇族ノ婚嫁ハ同族又ハ敕旨ニ由リ特ニ認許セラレタル華族ニ限ル
第四十條 皇族ノ婚嫁ハ敕許ニ由ル
第四十一條 皇族ノ婚嫁ヲ許可スルノ敕書ハ宮内大臣之ニ副署ス
第四十二條 皇族ハ養子ヲ爲スコトヲ得ス
第四十三條 皇族國疆ノ外ニ旅行セムトスルトキハ敕許ヲ請フヘシ
第四十四條 皇族女子ノ臣籍ニ嫁シタル者ハ皇族ノ列ニ在ラス但シ特旨ニ依リ仍内親王女王ノ稱ヲ有セシムルコトアルヘシ
第八章 世傳御料
第四十五條 土地物件ノ世傳御料ト定メタルモノハ分割讓與スルコトヲ得ス
第四十六條 世傳御料ニ編入スル土地物件ハ樞密顧問ニ諮詢シ敕書ヲ以テ之ヲ定メ宮内大臣之ヲ公告ス
第九章 皇室經費
第四十七條 皇室諸般ノ經費ハ特ニ常額ヲ定メ國庫ヨリ支出セシム
第四十八條 皇室經費ノ豫算決算檢査及其ノ他ノ規則ハ皇室會計法ノ定ムル所ニ依ル
第十章 皇族訴訟及懲戒
第四十九條 皇族相互ノ民事ノ訴訟ハ敕旨ニ依リ宮内省ニ於テ裁判員ヲ命シ裁判セシメ敕裁ヲ經テ之ヲ執行ス
第五十條 人民ヨリ皇族ニ對スル民事ノ訴訟ハ東京控訴院ニ於テ之ヲ裁判ス但シ皇族ハ代人ヲ以テ訴訟ニ當ラシメ自ラ訟廷ニ出ルヲ要セス
第五十一條 皇族ハ敕許ヲ得ルニ非サレハ勾引シ又ハ裁判所ニ召喚スルコトヲ得ス
第五十二條 皇族其ノ品位ヲ辱ムルノ所行アリ又ハ皇室ニ對シ忠順ヲ缺クトキハ敕旨ヲ以テ之ヲ懲戒シ其ノ重キ者ハ皇族特權ノ一部又ハ全部ヲ停止シ若ハ剥奪スヘシ
第五十三條 皇族蕩産ノ所行アルトキハ敕旨ヲ以テ治産ノ禁ヲ宣告シ其ノ管財者ヲ任スヘシ
第五十四條 前二條ハ皇族會議ニ諮詢シタル後之ヲ敕裁ス
第十一章 皇族會議
第五十五條 皇族會議ハ成年以上ノ皇族男子ヲ以テ組織シ内大臣樞密院議長宮内大臣司法大臣大審院長ヲ以テ參列セシム
第五十六條 天皇ハ皇族會議ニ親臨シ又ハ皇族中ノ一員ニ命シテ議長タラシム
第十二章 補則
第五十七條 現在ノ皇族五世以下親王ノ號ヲ宣賜シタル者ハ舊ニ依ル
第五十八條 皇位繼承ノ順序ハ總テ實系ニ依ル現在皇養子皇猶子又ハ他ノ繼嗣タルノ故ヲ以テ之ヲ混スルコトナシ
第五十九條 親王内親王王女王ノ品位ハ之ヲ廢ス
第六十條 親王ノ家格及其ノ他此ノ典範ニ牴觸スル例規ハ總テ之ヲ廢ス
第六十一條 皇族ノ財産歳費及諸規則ハ別ニ之ヲ定ムヘシ
第六十二條 將來此ノ典範ノ條項ヲ改正シ又ハ增補スヘキノ必要アルニ當テハ皇族會議及樞密顧問ニ諮詢シテ之ヲ敕定スヘシ
皇室典範增補(明治四十年二月十一日)
第一條 王ハ敕旨又ハ情願ニ依リ家名ヲ賜ヒ華族ニ列セシムルコトアルヘシ
第二條 王ハ敕許ニ依リ華族ノ家督相續人トナリ又ハ家督相續ノ目的ヲ以テ華族ノ養子トナルコトヲ得
第三條 前二條ニ依リ臣籍ニ入リタル者ノ妻直系卑屬及其ノ妻ハ其ノ家ニ入ル但シ他ノ皇族ニ嫁シタル女子及其ノ直系卑屬ハ此ノ限ニ在ラス
第四條 特權ヲ剥奪セラレタル皇族ハ敕旨ニ由リ臣籍ニ降スコトアルヘシ
前項ニ依リ臣籍ニ降サレタル者ノ妻ハ其ノ家ニ入ル
第五條 第一條第二條第四條ノ場合ニ於テハ皇族會議及樞密顧問ノ諮詢ヲ經ヘシ
第六條 皇族ノ臣籍ニ入リタル者ハ皇族ニ復スルコトヲ得ス
第七條 皇族ノ身位其ノ他ノ權義ニ關スル規程ハ此ノ典範ニ定メタルモノノ外別ニ之ヲ定ム
皇族ト人民トニ渉ル事項ニシテ各々適用スヘキ法規ヲ異ニスルトキハ前項ノ規程ニ依ル
第八條 法律命令中皇族ニ適用スヘキモノトシタル規定ハ此ノ典範又ハ之ニ基ツキ發スル規則ニ別段ノ條規ナキトキニ限リ之ヲ適用ス
皇室典範增補(大正七年十一月二十八日)
皇族女子ハ王族又ハ公族ニ嫁スルコトヲ得
皇室典範及皇室典範增補廢止ノ件(昭和二十二年五月一日)
明治二十二年裁定ノ皇室典範竝ニ明治四十年及大正七年裁定ノ皇室典範增補ハ昭和二十二年五月二日限リ之ヲ廢止ス
皇室祭祀令
明治41年9月19日皇室令第1号
第一章 総則
第一条 皇室ノ祭祀ハ他ノ皇室令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 祭祀ハ大祭及小祭トス
第三条 祭祀ハ附式ノ定ムル所ニ依リ之ヲ行フ
第四条 天皇喪ニ在ル間ハ祭祀ニ御神楽及東游ヲ行ハス
第五条 喪ニ在ル者ハ祭祀ニ奉仕シ又ハ参列スルコトヲ得ス但シ特ニ除服セラレタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第六条 祭祀ニ奉仕スル者ハ大祭ニハ其ノ当日及前二日小祭ニハ其ノ当日斎戒スヘシ
第七条 陵墓祭及官国幣社奉幣ニ関スル規程ハ本令又ハ他ノ皇室令ニ別段ノ定アルモノヲ除クノ外宮内大臣勅裁ヲ経テ之ヲ定ム
第二章 大祭
第八条 大祭ニハ天皇皇族及官僚ヲ率ヰテ親ラ祭典ヲ行フ
2 天皇喪ニ在リ其ノ他事故アルトキハ前項ノ祭典ハ皇族又ハ掌典長ヲシテ之ヲ行ハシム
第九条 大祭及其ノ期日ハ左ノ如シ
元始祭 一月三日紀元節祭 二月十一日春季皇霊祭 春分日春季神殿祭 春分日神武天皇祭 四月三日秋季皇霊祭 秋分日秋季神殿祭 秋分日神嘗祭 十月十七日新嘗祭 十一月二十三日ヨリ二十四日ニ亙ル先帝祭 毎年崩御日ニ相当スル日先帝以前三代ノ式年祭 崩御日ニ相当スル日先后ノ式年祭 崩御日ニ相当スル日皇妣タル皇后ノ式年祭 崩御日ニ相当スル日第十条 式年ハ崩御ノ日ヨリ三年五年十年二十年三十年四十年五十年百年及爾後毎百年トス
2 神武天皇祭及先帝祭前項ノ式年ニ当ルトキハ式年祭ヲ行フ
第十一条 元始祭及紀元節祭ハ賢所皇霊殿神殿ニ於テ之ヲ行フ
第十二条 春季皇霊祭神武天皇祭秋季皇霊祭先帝祭先帝以前三代ノ式年祭先后ノ式年祭及皇妣タル皇后ノ式年祭ハ皇霊殿ニ於テ之ヲ行フ但シ先帝祭ハ一周年祭ヲ訖リタル次年ヨリ之ヲ行フ
2 神武天皇祭先帝祭先帝以前三代ノ式年祭先后ノ式年祭及皇妣タル皇后ノ式年祭ノ当日ニハ其ノ山陵ニ奉幣セシム
第十三条 春季神殿祭及秋季神殿祭ハ神殿ニ於テ之ヲ行フ
第十四条 神嘗祭ハ神宮ニ於ケル祭典ノ外仍賢所ニ於テ之ヲ行フ
2 神嘗祭ノ当日ニハ天皇神宮ヲ遥拝シ且之ニ奉幣セシム
第十五条 新嘗祭ハ神嘉殿ニ於テ之ヲ行フ
2 新嘗祭ノ当日ニハ賢所皇霊殿神殿ニ神饌幣物ヲ奉ラシメ且神宮及官国幣社ニ奉幣セシム
第十六条 新嘗祭ヲ行フ前一日綾綺殿ニ於テ鎮魂ノ式ヲ行フ但シ天皇喪ニ在ルトキハ之ヲ行ハス
第十七条 新嘗祭ハ大嘗祭ヲ行フ年ニハ之ヲ行ハス
第十八条 神武天皇及先帝ノ式年祭ハ陵所及皇霊殿ニ於テ之ヲ行フ但シ皇霊殿ニ於ケル祭典ハ掌典長之ヲ行フ
第十九条 左ノ場合ニ於テハ大祭ニ準シ祭典ヲ行フ
一 皇室又ハ国家ノ大事ヲ神宮賢所皇霊殿神殿神武天皇山陵先帝山陵ニ親告スルトキ
二 神宮ノ造営ニ因リ新宮ニ奉遷スルトキ
三 賢所皇霊殿神殿ノ造営ニ因リ本殿又ハ仮殿ニ奉遷スルトキ
四 天皇太皇太后皇太后ノ霊代ヲ皇霊殿ニ奉遷スルトキ
2 前項ノ規定ニ依リ祭典ヲ行フ期日ハ之ヲ勅定シ宮内大臣之ヲ公告ス
第三章 小祭
第二十条 小祭ニハ天皇皇族及官僚ヲ率ヰテ親ラ拝礼シ掌典長祭典ヲ行フ
2 天皇喪ニ在リ其ノ他事故アルトキハ前項ノ拝礼ハ皇族又ハ侍従ヲシテ之ヲ行ハシム
第二十一条 小祭及其ノ期日ハ左ノ如シ
歳旦祭 一月一日祈念祭 二月十七日賢所御神楽 十二月中旬天長節祭 毎年天皇ノ誕生日ニ相当スル日先帝以前三代ノ例祭 毎年崩御日ニ相当スル日先后ノ例祭 毎年崩御日ニ相当スル日皇妣タル皇后ノ例祭 毎年崩御日ニ相当スル日綏靖天皇以下先帝以前四代ニ至ル歴代天皇ノ式年祭 崩御日ニ相当スル日第二十二条 前条ノ例祭ハ式年ニ当ルトキハ之ヲ行ハス
第二十三条 歳旦祭ノ当日ニハ之ニ先タチ四方拝ノ式ヲ行ヒ祈年祭ノ当日ニハ神宮及官国幣社ニ奉幣セシム但シ天皇喪ニ在リ其ノ他事故アルトキハ四方拝ノ式ヲ行ハス
第二十四条 賢所御神楽ハ賢所ニ於テ之ヲ行フ
第二十五条 例祭及式年祭ハ皇霊殿ニ於テ之ヲ行フ但シ例祭ハ一周年祭ヲ訖リタル次年ヨリ之ヲ行フ
2 第十条第一項ノ規定ハ前項ノ式年ニ之ヲ準用ス
第二十六条 皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃親王親王妃内親王王王妃女王ノ霊代ヲ皇霊殿ニ奉遷スルトキハ小祭ニ準シ祭典ヲ行フ此ノ場合ニ於テハ特旨ニ由ルノ外拝礼ヲ行ハス
2 前項ノ規定ニ依リ祭典ヲ行フ期日ハ之ヲ勅定ス
附 式 (略)
登極令
明治42年2月11日皇室令第1号
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ登極令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
登極令第一条 天皇践祚ノ時ハ即チ掌典長ヲシテ賢所ニ祭典ヲ行ハシメ且践祚ノ旨ヲ皇霊殿神殿ニ奉告セシム第二条 天皇践祚ノ後ハ直ニ元号ヲ改ム
元号ハ枢密顧問ニ諮詢シタル後之ヲ勅定ス第三条 元号ハ詔書ヲ以テ之ヲ公布ス第四条 即位ノ礼及大嘗祭ハ秋冬ノ間ニ於テ之ヲ行フ
大嘗祭ハ即位ノ礼ヲ訖リタル後続テ之ヲ行フ第五条 即位ノ礼及大嘗祭ヲ行フトキハ其ノ事務ヲ掌理セシムル為宮中ニ大礼使ヲ置ク
大礼使ノ官制ハ別ニ之ヲ定ム第六条 即位ノ礼及大嘗祭ヲ行フ期日ハ宮内大臣国務各大臣ノ連署ヲ以テ之ヲ公告ス第七条 即位ノ礼及大嘗祭ヲ行フ期日定マリタルトキハ之ヲ賢所皇霊殿神殿ニ奉告シ勅使ヲシテ神宮神武天皇山陵並前帝四代ノ山陵ヲ奉幣セシム第八条 大嘗祭ノ斎田ハ京都以東以南ヲ悠紀ノ地方トシ京都以西以北ヲ主基ノ地方トシ其ノ地方ハ之ヲ勅定ス第九条 悠紀主基ノ地方ヲ勅定シタルトキハ宮内大臣ハ地方長官ヲシテ斎田ヲ定メ其ノ所有者ニ対シ新穀ヲ供納スルノ手続ヲ為サシム第十条 稲実成熟ノ期至リタルトキハ勅使ヲ発遣シ斎田ニ就キ抜穂ノ式ヲ行ハシム第十一条 即位ノ礼ヲ行フ期日ニ先タチ天皇神器ヲ奉シ皇后ト共ニ京都ノ皇宮ニ移御ス第十二条 即位ノ礼ヲ行フ当日勅使ヲシテ之ヲ皇霊殿神殿ニ奉告セシム
大嘗祭ヲ行フ当日勅使ヲシテ神宮皇霊殿神殿並官国幣社ニ奉幣セシム第十三条 大嘗祭ヲ行フ前一日鎮魂ノ式ヲ行フ第十四条 即位ノ礼及大嘗祭ハ附式ノ定ムル所ニ依リ之ヲ行フ第十五条 即位ノ礼及大嘗祭訖リタルトキハ大饗ヲ賜フ第十六条 即位ノ礼及大嘗祭訖リタルトキハ天皇皇后ト共ニ神宮神武天皇山陵並前帝四代ノ山陵ニ謁ス第十七条 即位ノ礼及大嘗祭訖リテ東京ノ宮城ニ還幸シタルトキハ天皇皇后ト共ニ皇霊殿神殿ニ謁ス第十八条 諒闇中ハ即位ノ礼及大嘗祭ヲ行ハス
皇族身位令
明治43年3月3日皇室令第2号
第一章 班位
第一条 皇族ノ班位ハ左ノ順序ニ依ル
第一 皇后
第二 太皇太后
第三 皇太后
第四 皇太子
第五 皇太子妃
第六 皇太孫
第七 皇太孫妃
第八 親王親王妃内親王王王妃女王
第二条 親王王ノ班位ハ皇位継承ノ順序ニ従フ内親王女王ノ班位亦之ニ準ス
2 前項ノ規定ニ依リ同順位ニ在ル者ハ男ヲ先ニシ女ヲ後ニス
第三条 親王妃王妃ノ班位ハ夫ニ次ク内親王女王ニシテ親王妃王妃タル者亦同シ
第四条 故皇太子ノ妃ノ班位ハ皇太子妃ニ次キ故皇太孫ノ妃ノ班位ハ皇太孫妃ニ次ク
2 親王王ノ寡妃ノ班位ハ旧ニ依ル
第五条 摂政タル親王内親王王女王ノ班位ハ皇太孫妃ニ次キ故皇太孫ノ妃アルトキハ之ニ次ク
第六条 皇太子皇太孫皇位継承ノ順序ヲ換ヘラレタルトキハ其ノ班位ハ皇太孫妃ニ次キ故皇太孫ノ妃アルトキハ之ニ次キ摂政タル親王内親王王女王アルトキハ之ニ次ク
2 親王王皇位継承ノ順序ヲ換ヘラレタルトキハ其ノ班位ハ旧ニ依ル
第七条 従来ノ宣下親王ハ其ノ宣下セラレタル順序ニ依リ王ノ上ニ列ス
第二章 叙勲任官
第八条 皇后ハ大婚ノ約成リタルトキ勲一等ニ叙シ宝冠章ヲ賜フ
第九条 皇太子皇太孫ハ満七年ニ達シタル後大勲位ニ叙シ菊花大綬章ヲ賜フ
第十条 皇太子妃皇太孫妃ハ結婚ノ約成リタルトキ勲一等ニ叙シ宝冠章ヲ賜フ
第十一条 親王ハ満十五年ニ達シタル後大勲位ニ叙シ菊花大綬章ヲ賜フ
第十二条 親王妃ハ結婚ノ礼ヲ行フ当日勲一等ニ叙シ宝冠章ヲ賜フ
第十三条 内親王ハ満十五年ニ達シタル後勲一等ニ叙シ宝冠章ヲ賜フ
第十四条 王ハ満十五年ニ達シタル後勲一等ニ叙シ旭日桐花大綬章ヲ賜フ
第十五条 王妃ハ結婚ノ礼ヲ行フ当日勲二等ニ叙シ宝冠章ヲ賜フ
第十六条 女王ハ満十五年ニ達シタル後勲二等ニ叙シ宝冠章ヲ賜フ
第十七条 皇太子皇太孫ハ満十年ニ達シタル後陸軍及海軍ノ武官ニ任ス
2 親王王ハ満十八年ニ達シタル後特別ノ事由アル場合ヲ除クノ外陸軍又ハ海軍ノ武官ニ任ス
第十八条 天皇支系ヨリ入テ大統ヲ承クルトキハ前数条ノ規定ニ準シ叙勲任官ヲ行フ
第十九条 前数条ニ定メタルモノ及特旨ニ依ルモノノ外勲章記章及文武官ニ関スル法令ハ皇族ニモ亦之ヲ適用ス
第三章 失踪
第二十条 戦時事変其ノ他ノ場合ニ於テ皇族ノ生死不明ナルトキハ勅旨ヲ以テ其ノ財産ノ管理ニ付キ必要ナル処分ヲ命スヘシ
第二十一条 皇族ノ生死不明ナルコト三年ニ亙ルトキハ皇族会議及枢密顧問ニ諮詢シ勅旨ヲ以テ失踪ヲ宣告スヘシ
第二十二条 失踪ノ宣告ヲ受ケタル皇族ハ前条ノ期間満了ノ時ニ薨去シタルモノト看做ス
第二十三条 失踪ノ宣告アリタル後生死ノ事実分明トナリタルトキハ勅旨ヲ以テ其ノ宣告ヲ取消スヘシ但シ其ノ取消ハ失踪ノ宣告ニ基ツキタル事項行為ニ其ノ効力ヲ及ホサス
第二十四条 失踪ノ宣告及其ノ宣告ノ取消ハ勅書ヲ以テシ且宮内大臣之ヲ公告ス
第四章 降下
第二十五条 皇室典範増補第一条ノ規定ニ依ル情願ヲ為スニハ王満十五年以上タルコトヲ要ス
第二十六条 皇室典範増補第一条ノ規定ニ依リ華族ニ列セラレタル者ハ一家ヲ創立ス同第四条ノ規定ニ依リ臣籍ニ降サレタル者亦同シ
第二十七条 皇室典範増補第一条ノ規定ニ依リ華族ニ列セラレタル者ニハ世襲財産ヲ賜フコトアルヘシ
第二十八条 皇室典範増補第二条ノ規定ニ依リ王華族ノ家督相続人トナルニハ家督相続人トシテ指定又ハ選定アリタルコトヲ知リタル時ヨリ三箇月内ニ勅許ヲ受クヘシ
2 前項ノ規定ニ依リ勅許ヲ受ケタルトキハ相続ノ単純承認ヲ為シタルモノト看做ス
第二十九条 前条第一項ノ期間内ニ勅許ヲ受ケサルトキハ家督相続人トシテノ指定又ハ選定ハ其ノ効力ヲ失フ
第三十条 皇室典範増補第一条及第二条ノ場合ニ於テ王未成年ナルトキハ情願ヲ為シ又ハ勅許ヲ請フニ先タチ親権ヲ行フ父ノ同意ヲ受クヘシ
2 親権ヲ行フ父ナキトキハ其ノ後見人及親族会ノ同意ヲ受クヘシ
第三十一条 皇室典範増補第二条ノ規定ニ依リ華族ノ家督相続人トナルニ当リ王十五年未満ナルトキハ親権ヲ行フ父代リテ勅許ヲ請フコトヲ得
2 親権ヲ行フ父ナキトキハ其ノ後見人ニ於テ親族会ノ同意ヲ得テ勅許ヲ請フコトヲ得
3 前二項ノ場合ニ於テハ第二十八条第一項ノ期間ハ親権ヲ行フ父又ハ後見人指定又ハ選定アリタルコトヲ知リタル時ヨリ之ヲ起算ス
第三十二条 皇室典範増補第二条ノ規定ニ依リ華族ノ養子トナルニ当リ王十五年未満ナルトキ其ノ勅許ヲ請ヒ且縁組ノ承諾ヲ為スニハ前条第一項及第二項ノ規定ヲ準用ス
第三十三条 皇室典範増補第二条ノ規定ニ依ル養子縁組ハ勅許ナキトキハ之ヲ無効トス
第三十四条 臣籍ヨリ入リタル妃其ノ夫ヲ亡ヒタルトキハ情願ニ依リ勅許ヲ経テ実家ニ復籍スルコトヲ得
第三十五条 皇室典範増補第一条乃至第三条及前条ノ規定ニ依リ臣籍ニ降下スルトキハ賢所皇霊殿神殿ニ謁シ且天皇皇后太皇太后皇太后ニ朝見ス
第五章 懲戒
第三十六条 皇族ノ懲戒ハ謹慎停権及剥権トス
第三十七条 謹慎ハ後来ヲ訓戒シ十日以上一年以下参内ヲ止ム但シ特旨ニ依リ臨時参内ヲ命セラルルコトアルヘシ
第三十八条 停権ハ一年以上五年以下皇族特権ノ一部又ハ全部ノ行使ヲ停止ス
第三十九条 剥権ハ皇族特権ノ全部ヲ剥奪ス
第四十条 皇族懲戒ヲ受ケ改悛ノ状顕著ナルトキハ勅旨ヲ以テ其ノ懲戒ノ一部又ハ全部ヲ解除スヘシ
2 懲戒ノ解除ハ皇族会議ニ諮詢シタル後之ヲ勅裁ス
第四十一条 停権剥権ノ懲戒及其ノ解除ニ付テハ枢密顧問官及宮内勅任官中ヨリ三名以上ノ委員ヲ勅選シ其ノ情状ヲ審査セシメタル後皇族会議ニ諮詢ス
第四十二条 懲戒及其ノ解除ハ勅書ヲ以テス
第六章 補則
第四十三条 皇族ハ其ノ住所ヲ東京市内ニ定ムヘシ但シ必要アルトキハ勅許ヲ経テ他ニ住所ヲ定ムルコトヲ得
第四十四条 皇族ハ商工業ヲ営ミ営利ヲ目的トスル法人其ノ他ノ団体ノ社員会員又ハ役員トナルコトヲ得ス但シ株主トナルハ此ノ限ニ在ラス
第四十五条 皇族ハ任官ニ依ル場合ヲ除クノ外報酬ヲ受クル職ニ就クコトヲ得ス
第四十六条 皇族ハ公共団体ノ吏員又ハ議員トナルコトヲ得ス
第四十七条 皇族公益法人其ノ他営利ヲ目的トセサル団体ノ社員会員又ハ役員トナラムトスルトキハ勅許ヲ受クヘシ
皇室親族令
明治43年3月3日皇室令第3号
第一章 総則
第一条 本令其ノ他ノ皇室令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外左ニ掲ケタル者ヲ以テ親族トス
一 血族
二 配偶者
三 三親等内ノ姻族
第二条 天皇又ハ皇族ト臣籍ニ在ル者トノ間ニ於テハ血族ハ六親等内ニ限リ之ヲ親族トス
第三条 庶子ハ母方ニ付テハ親子間ニ限リ之ヲ親族トス
第四条 親等ハ親族間ノ世数ヲ算シテ之ヲ定ム
2 傍系親ノ親等ヲ定ムルニハ其ノ一人又ハ其ノ配偶者ヨリ同始祖ニ遡リ其ノ始祖ヨリ他ノ一人ニ下ルマテノ世数ニ依ル
第五条 姻族関係ハ離婚ニ因リテ止ム寡妃再婚ヲ為シ又ハ臣籍ニ入リタルトキ亦同シ
第二章 婚嫁
第一節 大婚
第六条 大婚ノ礼ハ天皇満十七年ニ達シタル後之ヲ行フ
第七条 天皇皇后ヲ立ツルハ皇族又ハ特ニ定ムル華族ノ女子満十五年以上ニシテ直系親族又ハ三親等内ノ傍系血族ニ非サル者ニ限ル姻族関係ノ止ミタル後亦之ニ準ス
第八条 大婚ノ約ヲ成ス当日之ヲ賢所皇霊殿神殿ニ奉告シ勅使ヲシテ神宮神武天皇山陵並先帝先后ノ山陵ニ奉幣セシム
第九条 大婚ノ約成リタルトキハ宮内大臣之ヲ公告ス
第十条 大婚ノ礼ヲ行フ期日ハ宮内大臣之ヲ公告ス
第十一条 大婚ノ礼ヲ行フ当日之ヲ賢所皇霊殿神殿ニ奉告ス
第十二条 大婚ノ礼ハ附式ノ定ムル所ニ依リ賢所大前ニ於テ之ヲ行フ
第十三条 立后ノ詔書ハ大婚ノ礼ヲ行フ当日之ヲ公布ス
第十四条 大婚ノ礼訖リタルトキハ天皇皇后ト共ニ皇霊殿神殿ニ謁ス
第十五条 大婚ノ礼訖リタルトキハ天皇皇后ト共ニ太皇太后皇太后ニ謁ス
第十六条 大婚ノ礼訖リタルトキハ天皇皇后ト共ニ正殿ニ御シ朝賀ヲ受ク
第十七条 大婚ノ礼訖リタルトキハ天皇皇后ト共ニ宮中ニ於テ饗宴ヲ賜フ
第十八条 大婚ノ礼訖リタルトキハ天皇皇后ト共ニ神宮神武天皇山陵並先帝先后ノ山陵ニ謁ス
第十九条 諒闇中ハ大婚ノ礼ヲ行ハス
第二節 皇族婚嫁
第二十条 皇族ノ婚嫁ハ男子満十七年女子満十五年ニ達スルニ非サレハ之ヲ成スコトヲ得ス
第二十一条 皇族ノ婚嫁ハ直系親族又ハ三親等内ノ傍系血族ノ間ニ於テハ之ヲ成スコトヲ得ス姻族関係ノ止ミタル後亦同シ
第二十二条 皇族婚嫁ノ勅許ハ其ノ約ヲ成ス前之ヲ奏請スヘシ
第二十三条 皇太子皇太孫親王王結婚ノ礼ハ附式ノ定ムル所ニ依リ賢所大前ニ於テ之ヲ行フ
第二十四条 皇太子皇太孫親王王結婚ノ礼訖リタルトキハ妃ト共ニ天皇皇后太皇太后皇太后ニ朝見ス
第二十五条 第八条乃至第十一条第十四条第十七条及第十八条ノ規定ハ皇太子皇太孫ノ結婚ニ之ヲ準用ス
第二十六条 第十条及第十四条ノ規定ハ親王ノ結婚ニ第十四条ノ規定ハ王ノ結婚ニ之ヲ準用ス
第二十七条 内親王女王臣籍ニ嫁スルトキハ結婚ノ礼ヲ行フ前賢所皇霊殿神殿ニ謁シ且天皇皇后太皇太后皇太后ニ朝見ス
第二十八条 皇族ノ婚嫁ハ結婚ノ礼ヲ行フ当日宮内大臣之ヲ公告ス
第二十九条 皇族ノ婚嫁ハ大喪中及直系尊属ノ喪中之ヲ成スコトヲ得ス
第三十条 皇族ハ止ムコトヲ得サル事故アル場合ニ限リ夫婦ノ協議ニ由リ勅許ヲ経テ離婚ヲ為スコトヲ得協議調ハサルトキハ勅裁ヲ受クヘシ
第三十一条 皇族ノ離婚ハ其ノ当日宮内大臣之ヲ公告ス
第三十二条 皇族男子ニ嫁シタル皇族女子離婚ノ場合ニ於テ直系尊属ノ臣籍ニ入リ創立シタル家アルトキハ其ノ家ニ入ル
第三十三条 臣籍ヨリ入リタル妃離婚ノ場合ニ於テハ実家ニ復籍シ其ノ実家ナキトキハ一家ヲ創立ス但シ実家ヲ再興スルコトヲ妨ケス
第三十四条 皇族ノ婚嫁及離婚ハ勅許ナキトキハ之ヲ無効トス
第三章 親子
第一節 皇子
第三十五条 皇子ノ誕生ニハ宮内大臣又ハ内大臣ヲシテ産殿ニ候セシム
第三十六条 皇子ノ誕生ハ其ノ当日宮内大臣之ヲ公告ス
第三十七条 皇子誕生シタルトキハ天皇之ニ名ヲ命ス
第三十八条 皇子ノ命名ハ其ノ当日宮内大臣之ヲ公告ス
第三十九条 皇子ノ誕生命名ハ之ヲ賢所皇霊殿神殿ニ奉告ス
第四十条 皇子誕生シテ五十日ニ至ルトキハ賢所皇霊殿神殿ニ謁ス但シ事故アルトキハ其ノ期日ヲ延フルコトアルヘシ
第四十一条 皇子ニシテ嫡出ニ非サル者ハ之ヲ皇庶子トス
第二節 皇族ノ子
第四十二条 皇太子皇太孫親王王ノ子ノ誕生ニハ宮内高等官ヲシテ産殿ニ候セシム但シ場合ニ依リ他ノ高等官ヲ以テ之ニ代フルコトヲ得
第四十三条 皇太子皇太孫ノ子誕生シタルトキハ天皇之ニ命スヘキ名ヲ賜フ
第四十四条 親王王ノ子誕生シタルトキハ直系尊属之ニ名ヲ命ス
第四十五条 第三十六条及第三十八条乃至第四十条ノ規定ハ皇太子皇太孫ノ子ニ第三十六条第三十八条及第四十条ノ規定ハ親王王ノ子ニ之ヲ準用ス
第四十六条 皇太子皇太孫親王王ノ子ニシテ嫡出ニ非サル者ハ之ヲ庶子トス
第四十七条 皇族ノ嫡出子又ハ庶子タル身分ニ対シテハ皇族又ハ宮内大臣ハ反対ノ事実ヲ主張スルコトヲ得
第四章 親権
第四十八条 皇族ノ子未成年ノ間ハ父ノ親権ニ服ス但シ婚嫁ノ後ハ此ノ限ニ在ラス
第四十九条 親権ヲ行フ父ハ子ノ保育ヲ為ス責務ヲ有ス
第五十条 親権ヲ行フ父ハ必要ナル範囲内ニ於テ子ヲ懲戒スルコトヲ得
第五十一条 親権ヲ行フ父ハ子ノ財産ヲ管理シ又其ノ財産ニ関スル行為ニ付キ子ヲ代表ス
2 前項ノ規定ハ皇太子皇太孫親権ヲ行フ場合ニ之ヲ適用セス
第五十二条 親権ヲ行フ父ハ子ニ代リテ其ノ子ノ庶子ニ対シ親権ヲ行フ
第五十三条 禁治産者準禁治産者及停権又ハ剥権ノ懲戒ヲ受ケ其ノ解除ヲ得サル者ハ親権ヲ行フコトヲ得ス
第五十四条 父親権ヲ行フニ適セサルトキハ勅旨ヲ以テ其ノ親権ノ全部又ハ一部ノ喪失ヲ命スヘシ
2 親権喪失ノ原因止ミタルトキハ勅旨ヲ以テ復権ヲ命スヘシ
第五十五条 前条ノ場合ニ於テハ皇族会議ニ諮詢シタル後之ヲ勅裁ス
第五章 親族会
第五十六条 親族会ハ未成年者及禁治産者ノ為ニ之ヲ設ク
2 親族会ハ本人ノ親族ヲ以テ之ヲ組織ス
第五十七条 親族会員ハ三人又ハ五人トス
第五十八条 親族会員ハ勅選ニ由ル
第五十九条 後見人未成年者及女子ハ親族会員タルコトヲ得ス
第六十条 親族会員ハ正当ノ事由アルトキハ勅許ヲ経テ辞任ヲ為スコトヲ得
第六十一条 親族会員ノ解任ハ勅旨ニ由ル
第六十二条 親族会ハ本人後見人又ハ会員之ヲ招集ス但シ書面ヲ以テ決議ヲ求ムルコトヲ得
第六十三条 親族会ノ決議ハ会員ノ過半数ニ依ル
第六十四条 親族会員ハ自己ノ利害ニ関スル事件ニ付キ表決ノ数ニ加ハルコトヲ得ス
第六十五条 本人父母配偶者及後見人ハ親族会ニ於テ意見ヲ述フルコトヲ得
2 親族会ノ招集ハ前項ニ掲ケタル者ニ之ヲ通知スヘシ
第六十六条 書面ヲ以テ親族会ノ決議ヲ求ムルトキハ前条第一項ニ掲ケタル者ノ意見モ亦書面ヲ以テ之ヲ徴スヘシ
第六十七条 親族会ノ決議ニ対シテ異議アルトキ又ハ親族会決議ヲ為スコト能ハサルトキハ本人後見人又ハ会員ニ於テ勅裁ヲ受クヘシ
第六十八条 親族会ノ決議ハ之ヲ記録ニ存スヘシ
附 式 (略)
皇室財産令
明治43年皇室令第33号
第一章 御料
第一節 総則
第一条 御料ハ世伝御料及普通御料トス
第二条 御料ニ関スル法律上ノ行為ニ付テハ宮内大臣ヲ以テ其ノ当事者ト看做ス但シ宮内大臣ハ所部ノ官吏ヲシテ代理セシムルコトヲ得
第三条 民法第一編乃至第三編商法及附属法令ハ皇室典範及本令其ノ他ノ皇室令ニ別段ノ定ナキトキニ限リ御料ニ関シ之ヲ準用ス
第二節 世伝御料
第四条 皇室典範第四十六条ノ規定ニ依リ世伝御料ニ編入シタル財産ノ公告ニハ左ノ事項ヲ掲クヘシ
一 土地ニ付テハ其ノ所在地目地番及面積
二 建物ニ付テハ其ノ所在種類構造及建坪
三 其ノ他ノ物件ニ付テハ其ノ品目種類及箇数
第五条 世伝御料ニ属スル財産ニ付テハ其ノ種類ニ従ヒ各台帳ヲ設ケ前条ニ掲ケタル事項ノ外土地ニ付テハ由緒建物ニ付テハ建造者年代及由緒其ノ他ノ物件ニ付テハ製作者筆者年代及由緒ヲ登録スヘシ
2 前項ニ掲ケタル事項ノ外宮内大臣ニ於テ必要ト認メタルモノハ勅裁ヲ経テ之ヲ台帳ニ登録スルコトヲ得
第六条 世伝御料ニ属スル土地ノ台帳ニハ図面及彊界簿ヲ添附シ建物ノ台帳ニハ図面ヲ添附スヘシ
第七条 世伝御料ニ属スル財産ノ台帳ハ図書寮ニ於テ尚蔵ス
第八条 世伝御料ニ属スル財産ハ重大ナル事由ヲ生シタル場合ニ限リ其ノ解除ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ解除ハ枢密顧問ニ諮詢シ勅書ヲ以テ之ヲ定メ宮内大臣之ヲ公告ス
第九条 世伝御料ニ属スル財産ハ必要アルトキハ勅裁ヲ経テ之ニ変更ヲ加ヘ又ハ之ヲ修補改築スルコトヲ得
第十条 前二条ノ場合ニ於テハ台帳ニ事由ヲ附記シ且異動ノ登録ヲ為スヘシ登録又ハ附記ノ事項ニ異動ヲ生シタル場合亦同シ
2 前二条ノ場合ヲ除クノ外世伝御料ニ属スル財産ニ異動ヲ生シタルトキハ勅裁ヲ経テ前項ノ手続ヲ為スヘシ
第十一条 左ノ場合ニ於テハ勅裁ヲ経テ台帳ノ登録又ハ附記ヲ訂正スヘシ
一 登録又ハ附記ノ事項若ハ文字ニ錯誤アリタルトキ
二 土地ノ登録面積実測面積ト異ナルトキ
第十二条 第五条及前二条ノ規定ニ依リ登録附記又ハ訂正ヲ為シタルトキハ台帳ニ其ノ年月日ヲ記入シ宮内大臣主管部局ノ長官及図書頭之ニ捺印スヘシ
第十三条 世伝御料ニ関シ公告ヲ経タル事項ニ異動ヲ生シタルトキハ宮内大臣之ヲ公告ス
第十四条 世伝御料ノ果実ハ普通御料ニ属ス変更修補又ハ改築ニ因リテ生シタル材料亦同シ
第十五条 世伝御料ニ属スル土地ノ上ニ新ニ物権ヲ設定スルハ公用又ハ公益事業ノ為ニ必要ナル場合ニ限ル
2 前項ノ規定ニ依リテ物権ヲ設定スルニハ枢密顧問ニ諮詢シタル後之ヲ勅裁ス
第十六条 世伝御料ニ属スル土地ノ上ニ物権ヲ設定シタルトキハ宮内大臣之ヲ公告ス其ノ公告シタル事項ニ異動ヲ生タルトキ亦同シ
2 前項ノ公告ハ登記ト同一ノ効力ヲ有ス
第十七条 前条ニ規定シタルモノヲ除クノ外世伝御料ニ編入シタル不動産ニ関スル権利ハ登記ヲ為サスシテ第三者ニ対抗スルコトヲ得
2 登記シタル不動産ヲ世伝御料ニ編入シタル場合ニ於テハ宮内大臣ハ遅滞ナク其ノ登記ノ抹消ヲ登記所ニ嘱託スヘシ
第三節 普通御料
第十八条 普通御料ニ属スル財産ニ付テハ其ノ種類ニ従ヒ必要ナル帳簿又ハ目録ヲ設ケ之ニ其ノ現況価格及異動ヲ登録シ土地ニ付テハ図面及彊界簿ヲ添附スヘシ但公用又ハ公益事業ニ供スル物件ニ付テハ其ノ現況価格ヲ登録スルコトヲ要セス
第十九条 普通御料ニ属スル財産ノ帳簿又ハ目録ハ主管部局ニ於テ保管ス
第二十条 内廷ニ属スル財産ノ管理ニ関スル規程ハ宮内大臣勅裁ヲ経テ之ヲ定ム
第二章 皇室財産
第一節 総則
第二十一条 第二条第三条及第十八条乃至第二十条ノ規定ハ太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃未タ婚嫁セサル未成年ノ皇子及皇太子皇太孫ノ子ニシテ未タ婚嫁セサル未成年者ノ財産ニ関シ之ヲ準用ス
第二十二条 民法第一編乃至第三編商法及附属法令並公益ノ為ニスル財産ノ収用徴発又ハ制限ニ関スル法令ハ皇室典範及本令其ノ他ノ皇室令ニ別段ノ定ナキトキニ限リ皇族ニ之ヲ適用ス但シ前条ニ掲ケタル皇族ハ此ノ限ニ在ラス
第二十三条 皇族臣籍ニ在ル者ノ遺贈ニ因リテ受遺者タルトキハ民法第五編第六章及第七章ノ規定ニ依ル
2 太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃ハ遺贈ヲ受クルコトナシ
第二節 治産能力
第二十四条 未タ婚嫁セサル未成年ノ皇族財産ニ関スル法律上ノ行為ヲ為スニハ其ノ法定代理人ノ同意ヲ受クヘシ
2 前項ノ規定ニ反スル行為ハ之ヲ取消スコトヲ得
第二十五条 前条ノ規定ハ法定代理人ニ於テ処分ヲ認諾セル財産ニ関スル行為及単ニ権利ヲ得又ハ義務ヲ免ルヘキ行為ニ之ヲ適用セス
第二十六条 前二条ノ規定ハ皇室典範第五十三条ニ依ル禁治産者ニ之ヲ準用ス
第二十七条 皇族精神ノ重患アルトキハ勅旨ヲ以テ禁治産ヲ宣告スルコトアルへシ
2 前項ノ規定ニ依リ禁治産ヲ宣告セラレタル者ハ之ヲ後見ニ付ス
第二十八条 前条ノ禁治産者ノ行為ハ之ヲ取消スコトヲ得
第二十九条 皇族精神ノ耗弱ナルトキ又ハ身体ノ重患アルトキハ勅旨ヲ以テ準禁治産ヲ宣告スルコトアルへシ
2 前項ノ規定ニ依リ準禁治産ヲ宣告セラレタル者ハ之ニ保佐人ヲ附ス
3 民法第十二条第一項及第三項ノ規定ハ準禁治産者ニ之ヲ準用ス
第三十条 禁治産又ハ準禁治産ノ原因止ミタルトキハ勅旨ヲ以テ之ヲ解除ス
第三十一条 禁治産又ハ準禁治産ノ宣告及解除ハ皇族会議ニ諮詢シタル後之ヲ勅裁ス
第三十二条 禁治産又ハ準禁治産ノ宣告及解除ハ宮内大臣之ヲ公告ス
第三十三条 保佐人ハ勅選ニ由ル
第三十四条 未成年者及女子ハ保佐人タルコトヲ得ス
第三十五条 保佐人ハ正当ノ事由アルトキハ勅許ヲ経テ辞任ヲ為スコトヲ得
第三十六条 保佐人ノ解任ハ勅旨ニ由ル
第三十七条 民法第十九条及第二十条ノ規定ハ未タ婚嫁セサル未成年者禁治産者及準禁治産者ノ行為ニ之ヲ準用ス
第三十八条 本節ノ規定ハ太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃未タ婚嫁セサル未成年ノ皇子及皇太子皇太孫ノ子ニシテ未タ婚嫁セサル未成年者ニ之ヲ適用セス
第三節 遺留財産
第三十九条 皇族男子ハ遺留財産ヲ設定シ又ハ之ヲ増加スルコトヲ得
第四十条 遺留財産ヲ設定又ハ増加セムト欲スル者ハ遺言ヲ以テ其ノ意思ヲ表示スルコトヲ得
第四十一条 未タ婚嫁セサル未成年者禁治産者及準禁治産者ハ遺留財産ヲ設定シ又ハ増加スルコトヲ得ス
第四十二条 遺留財産ヲ設定又ハ増加セムト欲スル者ハ其ノ財産ノ目録ヲ添ヘ其ノ旨ヲ宮内大臣ニ申述スヘシ
2 第四十条ノ場合ニ於テハ遺言ノ効力ヲ生シタル後相続人又ハ其ノ法定代理人ニ於テ遅滞ナク前項ノ手続ヲ為スヘシ
第四十三条 前条ノ申述アリタルトキハ宮内大臣ハ財産ノ目録ヲ審査シ支障ナシト認メタルトキハ其ノ財産ニ付キ之ヲ遺留財産ト為サムトスル申述アリタル旨ヲ勅裁ヲ経テ一週間公告スヘシ
2 前項ノ公告ニハ土地ニ付テハ其ノ所在地目及地番建物ニ付テハ其ノ所在及種類其ノ他ノ物件ニ付テハ其ノ品目種類箇数其ノ他必要ナル事項ヲ掲クヘシ
第四十四条 前条ノ規定ニ依リ公告シタル財産ニ関シ権利ヲ主張セムト欲スル者ハ前条第一項ノ公告期間満了ノ後三十日内ニ故障ヲ宮内大臣ニ申出ツルコトヲ要ス
2 前項ノ期間内ニ故障ノ申出ナキトキハ登記ナキ権利ハ之ヲ主張スルコトヲ得ス登録国債ニ付キ登録ナキ権利亦同シ
第四十五条 宮内大臣ハ故障ノ申出ナキ財産ニ限リ之ヲ遺留財産ト為スコトニ付キ勅許ヲ受クヘシ
第四十六条 遺留財産ノ設定又ハ増加ノ勅許アリタルトキハ宮内大臣ハ其ノ旨及第四十三条第二項ニ掲ケタル事項ヲ公告スヘシ
第四十七条 遺留財産ニ付テハ台帳ヲ設ケ之ニ左ノ事項ヲ登録スへシ
一 遺留財産設定増加ノ申述者又ハ遺言者
二 勅許ノ年月日
三 土地ニ付テハ其ノ所在地目地番及面積建物ニ付テハ其ノ所在種類構造及建坪其ノ他ノ物件ニ付テハ其ノ品目種類箇数其ノ他必要ナル事項
第四十八条 遺留財産中有価証券アルトキハ之ニ遺留財産タル旨ヲ記入シ登録国債アルトキハ国債登録簿ニ遺留財産タル旨ノ登録ヲ経ヘシ
第四十九条 遺留財産ノ相続ハ其ノ所有者タル皇族ノ薨去ニ因リテ開始ス
第五十条 遺留財産ハ設定者ヨリ出テタル男系ノ皇族男子皇位継承ノ順序ニ依リ之ヲ相続ス
第五十一条 遺留財産ノ相続ハ之ヲ抛棄スルコトヲ得ス
第五十二条 遺留財産ノ相続アリタルトキハ宮内大臣ハ其ノ旨ヲ公告シ且之ヲ台帳ニ附記スヘシ
第五十三条 遺留財産ハ勅許ヲ経テ其ノ管理ヲ宮内大臣ニ委託スルコトヲ得
第五十四条 相続開始前ノ申述ニ係ル遺留財産ノ設定又ハ増加ニ付キ相続開始ノ後勅許アリタルトキハ其ノ設定又ハ増加ハ相続開始ノ時ニ遡リテ其ノ効力ヲ生ス遺言ニ基ツク遺留財産ノ設定又ハ増加ノ勅許アリタルトキ亦同シ
第五十五条 遺留財産ノ果実ハ遺留財産ニ属セス変更修補又ハ改築ニ因リテ生シタル材料亦同シ
第五十六条 遺留財産ハ之ヲ処分スルコトヲ得ス
2 遺留財産ニ付キ地上権永小作権又ハ地役権ヲ設定セムトスルトキハ勅許ヲ受クへシ
第五十七条 遺留財産ハ之ヲ執行行為ノ目的ト為スコトヲ得ス
第五十八条 遺留財産所有者ハ勅許ヲ経テ遺留財産ノ全部又ハ一部ヲ廃止スルコトヲ得
第五十九条 第四十条乃至第四十二条及第五十四条ノ規定ハ遺留財産ノ廃止ニ之ヲ準用ス
第六十条 遺留財産ノ相続人ナキトキハ之ヲ廃止シタルモノト看做ス
第六十一条 遺留財産ノ廃止其ノ他ノ異動ヲ生シタル場合ニ於テハ宮内大臣ハ其ノ旨ヲ公告シ且台帳ニ事由ヲ附記シテ異動ノ登録ヲ為スヘシ
2 前項ノ公告ニハ第四十三条第二項ノ規定ヲ準用ス
第六十二条 本節ノ規定ハ皇太子皇太孫ニ之ヲ適用セス
第四節 遺産相続
第六十三条 遺産相続ハ皇族ノ薨去ニ因リテ開始ス
第六十四条 遺産相続ハ左ノ順位ニ依ル
第一 直系卑属
第二 配偶者
第三 直系尊属
第四 兄弟姉妹
2 前項ノ規定ニ依リ直系卑属又ハ直系尊属ノ間ニ於テ遺産相続ヲ為スハ親等ノ異ナリタルル者ノ間ニ在リテハ其ノ近キ者ヲ先ニシ親等ノ同キ者ハ同順位ニ於テス
第六十五条 前条ノ規定ニ依リ遺産相続ヲ為スヘキ直系卑属相続開始前ニ薨去又ハ死亡シタル場合ニ於テ其ノ者ニ直系卑属アルトキハ其ノ直系卑属ハ其ノ者ノ順位ニ於テ遺産相続ヲ為ス
第六十六条 遺産相続人相続ノ抛棄ヲ為サムト欲スルトキハ自己ノ為ニ相続ノ開始アリタルルコトヲ知リタル時ヨリ三箇月内ニ其ノ旨ヲ宮内大臣ニ申述スヘシ
2 遺産相続人前項ノ期間内ニ抛棄ノ申述ヲ為ササリシトキハ相続ノ承認ヲ為シタルモノト看做ス
第六十七条 遺産相続人ハ相続ノ承認前ニ於テ相続財産ヲ処分スルコトヲ得ス共同相続人ノ承認又ハ抛棄前亦同シ
第六十八条 相続財産ハ相続ノ承認アルマテ宮内大臣之ヲ管理ス共同相続人ノ承認又ハ抛棄前亦同シ
2 前項ノ規定ハ遺言執行者アル場合ニ之ヲ適用セス
第六十九条 同順位ノ遺産相続人数人アルトキハ其ノ各自ノ相続分ハ相均キモノトス但シ直系卑属数人アルトキハ庶子ノ相続分ハ嫡出子ノ相続分ノ二分ノ一トス
第七十条 第六十五条ノ規定ニ依リテ遺産相続人タル直系卑属ノ相続分ハ其ノ直系尊属ノ受クへカリシモノニ同シ但シ直系卑属数人アルトキハ其ノ各自ノ直系尊属ノ受クヘカリシ部分ニ付キ前条ノ規定ニ従ヒテ其ノ相続分ヲ定ム
第七十一条 被相続人ハ前二条ノ規定ニ拘ラス遺言ヲ以テ共同相続人ノ相続分ヲ定ムルコトヲ得
2 被相続人ニ於テ共同相続人中ノ一人又ハ数人ノ相続分ノミヲ定メタルトキハ他ノ共同相続人ノ相続分ハ前二条ノ規定ニ依リテ之ヲ定ム
第七十二条 被相続人ハ遺言ヲ以テ相続財産分割ノ方法ヲ定ムルコトヲ得
第七十三条 相続財産ノ分割ニ付キ協議調ハサルトキハ宮内大臣勅裁ヲ経テ之ヲ為ス
第七十四条 民法第九百六十八条第千一条乃至第千三条第千九条第千十一条乃至第千十六条第千十八条第千十九条第千二十二条及第千三十九条ノ規定ハ皇族ノ遺産相続ニ之ヲ準用ス
第七十五条 遺産相続人ナキトキハ宮内大臣遺産ノ清算ヲ為ス此ノ場合ニ於テハ宮内大臣ヲ以テ遺産ニ関スル法律上ノ行為ノ当事者ト看做ス但シ宮内大臣ハ所部ノ官吏ヲシテ代理セシムルコトヲ得
2 宮内大臣ハ遅滞ナク一切ノ相続債権者及受遺者ニ対シ二箇月内ニ其ノ請求ノ申出ヲ為スヘキ旨ヲ公告スヘシ
第七十六条 前条第二項ノ期間満了ノ後宮内大臣ハ相続債権者及受遺者ニ弁済ヲ為シ仍残余財産アルトキハ其ノ財産ハ普通御料ニ帰属ス
2 民法第千三十一条乃至第千三十三条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス但シ条件附債権又ハ存続期間ノ不確定ナル債権ハ宮内大臣ノ命シタル評価人ヲシテ之ヲ評価セシム
第七十七条 前条第一項ノ規定ニ依リ残余財産普通御料ニ帰属シタルトキハ相続債権者及受遺者ハ其ノ権利ヲ失フ
第七十八条 皇族臣籍ニ在ル者ノ遺産相続人タルトキハ民法第五編第二章乃至第四章及第七章ノ規定ニ依ル
第七十九条 本節ノ規定ハ太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃ニ之ヲ適用セス但シ其ノ遺産ハ普通御料ニ帰属ス
第三章 帝室経済会議
第八十条 帝室ノ経済ニ関スル事項ヲ諮詢スル為帝室経済会議ヲ置ク
第八十一条 帝室経済会議ニ諮詢スヘキ事項ノ概目左ノ如シ
一 皇室経費ノ予算ニ関スル事項
二 第二予備金ノ支出其ノ他予算外ノ支出ニ関スル事項
三 世伝御料ノ編入及解除ニ関スル事項
四 世伝御料ニ属スル土地ノ上ニ設定スル物権ニ関スル事項
五 重要ナル財産権ノ得喪ニ関スル事項
第八十二条 帝室経済会議ハ内大臣宮内大臣及勅命セラレタル帝室経済顧問七人以内ヲ以テ之ヲ組織ス
第八十三条 宮内次官内蔵頭帝室林野管理局長官及帝室会計審査局長官ハ帝室経済会議ニ列シテ意見ヲ述フルコトヲ得
第八十四条 帝室経済会議ニ関シ必要ナル規程ハ其ノ会議ニ於テ之ヲ議定シ勅裁ヲ受クヘシ
第八十五条 帝室経済会議ニ関スル庶務ハ宮内高等官ヲシテ之ヲ管掌セシム
附 則
第八十六条 本令ハ明治四十五年一月一日ヨリ之ヲ施行ス
第八十七条 国有林野法第四条乃至第六条ノ規定ハ御料ニ属スル林野ニ之ヲ準用ス
2 前項ノ規定ニ依リテ為シタル彊界査定ニ不服アル隣接地所有者彊界査定ノ通告ヲ受ケタル日ヨリ三箇月内ニ通常裁判所ニ訴訟ヲ提起セサルトキハ其ノ彊界査定ハ確定シタルモノト看做ス
皇統譜令
大正15年皇室令第6号
第一章 総則
第一条 皇統譜ハ大統譜及皇族譜トス
第二条 皇統譜ハ副本ヲ備フヘシ
2 副本ハ内大臣府ニ於テ保管ス
第三条 皇統譜及副本ニハ簿冊毎ニ表紙ノ裏面ニ御璽ヲ鈐シ宮内大臣枚数及調製ノ年月日ヲ記入シ図書頭ト倶ニ之ニ署名スヘシ
2 皇統譜及副本ニハ宮内大臣及図書頭其ノ綴糸ニ封印スヘシ
第四条 皇統譜ノ登録ハ移記ノ場合及判決ニ基ク場合ヲ除クノ外公布又ハ公告ニ依リ之ヲ行ヒ公布公告ナキ事項ニ付テハ勅裁ヲ経テ之ヲ行フ
第五条 皇統譜ノ登録又ハ附記ニ錯誤アルコトヲ発見シタルトキハ勅裁ヲ経テ之ヲ訂正スヘシ
2 前項ノ場合ニ於テハ皇族会議及枢密顧問ノ諮詢ヲ経ヘシ
第六条 判決ニ因リ皇統譜ノ登録事項ニ変更ヲ生シタルトキハ其ノ判決ニ基キテ之ヲ訂正スヘシ
第七条 前二条ノ場合ニ於テハ抹消又ハ変更ノ登録ヲ為シ且事由ヲ附記スヘシ
第八条 皇統譜副本ノ登録及附記ハ正本ニ基キテ之ヲ行フ
第九条 皇統譜及副本ニ登録又ハ附記ヲ為シタルトキハ其ノ年月日ヲ記入シ宮内大臣及図書頭之ニ署名スヘシ
第十条 皇統譜ノ登録及附記ニ関スル記録ハ図書寮ニ於テ尚蔵ス
第二章 大統譜
第十一条 大統譜ハ天皇ニ由リ門ヲ分チテ其ノ代数ヲ掲ケ各門ニ天皇ノ欄及皇后ノ欄ヲ設ク
第十二条 天皇ノ欄ニハ左ノ事項ヲ登録スヘシ
一 御名
二 父
三 母
四 誕生ノ年月日時及場所
五 命名ノ年月日
六 践祚ノ年月日
七 元号及改元ノ年月日
八 即位礼ノ年月日
九 大嘗祭ノ年月日
十 成年式ノ年月日
十一 大婚ノ年月日及皇后ノ名
十二 崩御ノ年月日時及場所
十三 追号及追号勅定ノ年月日
十四 大喪儀ノ年月日陵所及陵名
第十三条 皇后ノ欄ニハ左ノ事項ヲ登録スヘシ
一 名
二 父
三 母
四 誕生ノ年月日時及場所
五 命名ノ年月日
六 大婚ノ年月日
七 崩御ノ年月日時及場所
八 追号及追号勅定ノ年月日
九 大喪儀ノ年月日陵所及陵名
第十四条 摂政ヲ置キタルトキ又ハ摂政ノ更迭アリタルトキハ其ノ年月日及摂政ノ名ヲ天皇ノ欄ニ登録スヘシ
2 摂政止ミタルトキハ其ノ年月日ヲ登録スヘシ
第十五条 皇后崩御シタルトキハ其ノ年月日及皇后ノ名ヲ天皇ノ欄ニ登録スヘシ
第十六条 親王王大統ヲ承ケタルニ因リ其ノ妃皇后トナリタルトキハ其ノ年月日ヲ皇后ノ欄ニ登録スヘシ
第十七条 皇后皇太后トナリタルトキハ其ノ年月日ヲ該皇后ノ欄ニ登録スヘシ皇太后太皇太后トナリタルトキ亦同シ
第十八条 皇后摂政ニ任シ又ハ摂政ヲ罷メタルトキハ其ノ年月日ヲ該皇后ノ欄ニ登録スヘシ皇太后太皇太后摂政ニ任シ又ハ摂政ヲ罷メタルトキ亦同シ
第十九条 皇后皇太后トナリタル後ニ生シタル事項ハ仍該皇后ノ欄ニ登録スヘシ
第二十条 親王王大統ヲ承ケタルトキハ該親王王ノ欄ニ記載シタル事項ヲ皇族譜ヨリ大統譜ニ移記スヘシ妃アルトキハ其ノ妃ノ欄ニ記載シタル事項亦同シ
第二十一条 内親王女王皇后トナリタルトキハ該内親王女王ノ欄ニ記載シタル事項ヲ皇族譜ヨリ大統譜ニ移記スヘシ
第三章 皇族譜
第二十二条 皇族譜ハ所出天皇ニ由リ簿冊ヲ区分シ各親王内親王王女王ニ付一欄ヲ設ケ妃ニ付テハ夫ノ所出天皇ニ属スル簿冊ニ各一欄ヲ設ク
第二十三条 親王親王妃内親王王王妃女王ノ欄ニハ左ノ事項ヲ登録スヘシ
一 名
二 父
三 母
四 誕生ノ年月日時及場所
五 命名ノ年月日
六 成年式ノ年月日
七 婚嫁ノ年月日及配偶者ノ名
八 薨去ノ年月日時及場所
九 喪儀ノ年月日及墓所
第二十四条 立太子又ハ立太孫ノ礼ヲ行ヒタルトキハ其ノ年月日ヲ該親王ノ欄ニ登録スヘシ
第二十五条 親王王大統ヲ承ケタルトキハ其ノ直系卑属ノ欄ニ記載シタル事項ヲ其ノ所出天皇ニ属スル簿冊ニ移記スヘシ該直系卑属ノ妃ノ欄ニ記載シタル事項亦同シ
2 前項ノ場合ニ於テ直系卑属タル王女王アルトキ又ハ直系卑属タル王ニ妃アルトキハ其ノ親王内親王又ハ親王妃トナリタル年月日ヲ登録シ且事由ヲ附記スヘシ
第二十六条 親王王大統ヲ承ケタル場合ニ於テ其ノ直系卑属タル女王ニシテ親王妃王妃タル者アルトキハ該妃ノ欄ニ其ノ内親王トナリタル年月日ヲ登録シ且事由ヲ附記スヘシ
第二十七条 天皇支系ヨリ入テ大統ヲ承ケタル場合ニ於テ其ノ兄弟姉妹タル王女王ニ親王内親王ノ号ヲ宣賜シタルトキハ欄名ヲ親王内親王ト改メ宣賜ノ年月日ヲ登録スヘシ
2 女王ニシテ親王妃王妃タル者ニ内親王ノ号ヲ宣賜シタルトキハ該妃ノ欄ニ宣賜ノ年月日ヲ登録スヘシ
3 第一項ノ場合ニ於テ王ニ妃アルトキハ欄名ヲ親王妃ト改メ其ノ親王妃トナリタル年月日ヲ登録シ且事由ヲ附記スヘシ
第二十八条 皇室典範第九条ノ規定ニ依リ皇位継承ノ順序ヲ換ヘタルトキハ其ノ年月日ヲ皇嗣タリシ親王王ノ欄ニ登録シ且事由ヲ附記スヘシ
第二十九条 内親王女王親王王ニ嫁シタルトキハ該内親王女王ノ欄ニ記載シタル事項ヲ其ノ夫タル親王王ノ妃ノ欄ニ移記スヘシ但シ所出天皇同キトキハ欄名ヲ親王妃王妃ト改ムルヲ以テ足ル
第三十条 親王妃王妃離婚ノ場合ニ於テハ其ノ年月日ヲ夫タリシ親王王及該妃ノ欄ニ登録スヘシ
2 前項ノ場合ニ於テ妃内親王女王ナルトキハ該妃ノ欄ニ記載シタル婚嫁後ノ事項ヲ該内親王女王ノ旧欄ニ移記スヘシ但シ所出天皇同キトキハ欄名ヲ内親王女王ト改ムルヲ以テ足ル
第三十一条 皇室典範増補第一条又ハ第二条ノ規定ニ依リ王臣籍ニ入リタルトキハ其ノ年月日ヲ該王ノ欄ニ登録シ且事由及氏名身位ヲ附記スヘシ同第四条第一項ノ規定ニ依リ皇族臣籍ニ降サレタル場合之ニ準ス
第三十二条 皇室典範増補第三条又ハ第四条第二項ノ規定ニ依リ臣籍ニ入リタル皇族アルトキハ其ノ年月日ヲ該皇族ノ欄ニ登録シ且事由及其ノ入リタル家ノ戸主ノ氏名身位ヲ附記スヘシ皇族身位令第三十四条及皇室親族令第三十二条ノ場合之ニ準ス
第三十三条 内親王女王皇族ニ非サル者ニ嫁シタルトキハ其ノ年月日ヲ該内親王女王ノ欄ニ登録シ且夫ノ氏名身位ヲ附記スヘシ
2 皇室典範第四十四条ノ規定ニ依リ内親王女王ノ称ヲ有セシメタルトキハ其ノ旨ヲ附記スヘシ
第三十四条 皇室親族令第三十三条ノ場合ニ於テハ臣籍ニ入リタル年月日ヲ妃ノ欄ニ登録シ且事由ヲ附記シ復籍ノ場合ニ於テハ其ノ家ノ戸主ノ氏名身位一家創立又ハ実家再興ノ場合ニ於テハ氏名ヲ附記スヘシ
第三十五条 配偶者アル皇族薨去シタルトキハ其ノ年月日及名ヲ該配偶者ノ欄ニ登録スヘシ
第三十六条 皇族摂政ニ任シ又ハ摂政ヲ罷メタルトキハ其ノ年月日ヲ該皇族ノ欄ニ登録スヘシ
第三十七条 皇族失踪ノ宣告ヲ受ケタルトキハ其ノ年月日ヲ該皇族ノ欄ニ登録スヘシ其ノ宣告ノ取消アリタルトキ亦同シ
第三十八条 皇族譜ヨリ大統譜ニ移記シ又ハ皇族譜中一ノ欄ヨリ他ノ欄ニ移記シタルトキハ其ノ年月日ヲ新欄及旧欄ニ登録シ且事由ヲ附記スヘシ
第四章 補則
第三十九条 神代ノ大統ハ勅裁ヲ経テ大統譜ノ首部ニ登録スヘシ
第四十条 前条ニ依ルモノヲ除クノ外従前ノ皇統譜ニ記載シタル事項ハ本令ノ規定ニ準シ勅裁ヲ経テ之ヲ本令ニ依ル皇統譜ニ登録スヘシ本令ニ依ル登録事項ニ非スト雖登録ヲ必要トスルモノ亦同シ
2 前項ノ場合ニ於テハ皇族ニ係ル事項ハ所出天皇ヲ異ニスル皇族ト雖其ノ少数ナルモノニ付テハ一簿冊中ニ区分ヲ設ケ之ヲ登録スルコトヲ妨ケス
第四十一条 光厳天皇光明天皇崇光天皇後光厳天皇及後円融天皇ニ係ル事項ハ勅裁ヲ経テ別ニ簿冊ヲ設ケ大統譜ニ準シテ之ヲ登録スヘシ
第四十二条 第四十条ノ規定ニ依リ登録スヘキ簿冊中ノ欄ハ左ノ区別ニ従フ
一 中宮尊称太皇太后尊称皇太后贈皇太后及贈皇后ニ係ル事項ハ之ヲ大統譜中皇后ノ欄ニ登録スヘシ
二 皇族ニ係ル事項ハ皇室典範第三十一条ノ別ニ従ヒ之ヲ各親王内親王王女王ノ欄ニ登録スヘシ
三 親王ノ号ヲ宣賜セラレタル五世以下ノ皇族ニ係ル事項ハ之ヲ親王ノ欄ニ登録スヘシ
四 前二号ノ規定ニ依リ登録スヘキ親王王ノ配偶者ニ係ル事項ハ之ヲ妃ノ欄ニ登録スヘシ
皇室儀制令
大正15年10月21日皇室令第7号
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ皇室儀制令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御 名 御 璽
摂 政 名
大正十五年十月二十一日
宮内大臣 一木喜德郎
内閣總理大臣 若槻禮次郎
陸軍大臣 宇垣 一成
海軍大臣 財部 彪
外務大臣 男爵 幣原喜重郎
内務大臣 濱口 雄幸
皇室令第七號
皇室儀制令
第一章 朝儀
第一条 朝儀ハ他ノ皇室令ニ別段ノ定アルモノヲ除クノ外本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 新年祝賀ノ式ハ一月一日及二日宮中ニ於テ之ヲ行フ
第三条 政始ノ式ハ一月四日宮中ニ於テ之ヲ行フ
第四条 新年宴会ハ一月五日紀元節ノ式ハ二月十一日天長節ノ式ハ天皇ノ誕生日ニ相当スル日宮中ニ於テ之ヲ行フ
2 別ニ天長節祝日ヲ定メタルトキハ天長節ノ式ハ其ノ日之ヲ行フ
第五条 講書始ノ式及歌会始ノ式ハ一月宮中ニ於テ之ヲ行フ
第六条 帝国議会ノ開院式及閉院式ハ貴族院ニ於テ之ヲ行フ
第七条 親任式親授式親補式信任状捧呈ノ式及解任状捧呈ノ式ハ宮中ニ於テ之ヲ行フ
第八条 天皇喪ニ在ルトキハ新年朝賀ノ式新年宴会紀元節ノ式天長節ノ式講書始ノ式及歌会始ノ式ハ之ヲ行ハス摂政喪ニ在ルトキ亦同シ
第九条 天皇事故アリ其ノ他已ムコトヲ得サル事由アルトキハ帝国議会ノ開院式及閉院式ヲ除クノ外臨時ノ勅定ニ依リ本章ニ掲クル朝儀ノ全部又ハ一部ヲ行ハサルコトアルヘシ摂政事故アルトキ亦同シ
第十条 本章ニ掲クル朝儀ハ附式ノ定ムル所ニ依リ之ヲ行フ
第十一条 本章ニ掲ケサル朝儀ハ臨時ノ勅定ニ依ル
第二章 紋章及旗章
第十二条 天皇太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃ノ紋章ハ十六葉八重菊形トシ左ノ様式ニ依ル(図略)
第十三条 親王親王妃内親王王王妃女王ノ紋章ハ十四葉一裏菊形トシ左ノ様式ニ依ル(図略)
第十四条 天皇旗ハ左ノ様式ニ依ル(図略)
地色 紅
紋章 金
横 縦ノ一ト二分一
菊心 旗面ノ中心
菊心径 縦ノ十九分一
菊全径 縦ノ三分一
第十五条 太皇太后旗皇太后旗皇后旗ハ左ノ様式ニ依ル(図略)
地色 紅
紋章 金
横 縦ノ一ト四分三
燕尾開裂 横ノ三分一上下等分
菊心 燕尾ヲ除キ旗面ノ中心
菊心径 縦ノ十九分一
菊全径 縦ノ三分一
第十六条 摂政旗ハ左ノ様式ニ依ル(図略)
地色 紅
紋章 金
縁 白
横 縦ノ一ト二分一
菊心 旗面ノ中心
菊心径 縦ノ二十六分一
菊全径 縦ノ二分一
縁幅 縦ノ十五分一
第十七条 皇太子旗皇太孫旗ハ左ノ様式ニ依ル(図略)
地色 紅
紋章 金
輪廓 白
縁 紅
横 縦ノ一ト二分一
菊心 旗面ノ中心
菊心径 縦ノ二十六分一
菊全径 縦ノ二分一
輪廓幅 縦ノ十五分一
縁幅 縦ノ十五分二
第十八条 皇太子妃旗皇太孫妃旗ハ左ノ様式ニ依ル(図略)
地色 紅
紋章 金
輪廓 白
縁 紅
横 縦ノ一ト四分三
燕尾開裂 横ノ三分一上下等分
菊心 燕尾ヲ除キ輪廓内ノ中心
菊心径 縦ノ二十六分一
菊全径 縦ノ二分一
輪廓幅 縦ノ十五分一
縁幅 縦ノ十五分二
第十九条 親王旗親王妃旗内親王旗王旗王妃旗女王旗ハ左ノ様式ニ依ル(図略)
地色 白
紋章 金
縁 紅
横 縦ノ一ト二分一
菊心 旗面ノ中心
菊心径 縦ノ二十六分一
菊全径 縦ノ二分一
縁幅 縦ノ十五分二
第二十条 前六条ニ規定スル旗章ノ地質ハ錦トス但シ特別ノ事由アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第二十一条 摂政旗ハ摂政朝儀ニ臨ム場合又ハ特旨ニ依ル場合ニ之ヲ用ウ
2 親王旗親王妃旗内親王旗王旗王妃旗女王旗ハ親王親王妃内親王王王妃女王天皇又ハ皇后ニ代リテ朝儀ニ臨ム場合又ハ特旨ニ依ル場合ニ之ヲ用ウ
第三章 鹵簿
第二十二条 鹵簿ハ他ノ皇室令ニ別段ノ定アルモノヲ除クノ外本章ノ定ムル所ニ依ル
第二十三条 天皇ノ鹵簿ハ第一公式第二公式第三公式及略式トス
2 重大ノ朝儀ニハ第一公式ノ鹵簿ヲ用ヰ其ノ他ノ朝儀ニハ第二公式又ハ第三公式ノ鹵簿ヲ用ウ
3 朝儀ニ非サル場合ニハ第三公式又ハ略式ノ鹵簿ヲ用ウ
第二十四条 太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃ノ鹵簿ハ各公式及略式トス
2 朝儀ニハ公式ノ鹵簿ヲ用ヰ其ノ他ノ場合ニハ略式ノ鹵簿ヲ用ウ
第二十五条 摂政ノ鹵簿ハ第一公式第二公式及略式トス
2 重大ノ朝儀ニハ第一公式ノ鹵簿ヲ用ヰ其ノ他ノ朝儀ニハ第二公式ノ鹵簿ヲ用ウ
3 朝儀ニ非サル場合ニハ略式ノ鹵簿ヲ用ウ
第二十六条 親王親王妃内親王王王妃女王ハ天皇又ハ皇后ニ代リテ朝儀ニ臨ム場合又ハ特旨ニ依ル場合ニ公式ノ鹵簿ヲ用ウ
第二十七条 公式ノ鹵簿ハ附式ノ定ムル所ニ依ル
第二十八条 天皇太皇太后皇太后皇后皇太子皇太子妃皇太孫皇太孫妃同乗又ハ同列ノ場合ニ於ケル鹵簿及略式ノ鹵簿ハ別ニ之ヲ定ム
第四章 宮中席次
第二十九条 文武高官有爵者優遇者ノ宮中ニ於ケル席次ハ特旨ニ由ルモノヲ除クノ外左ノ順位ニ依ル
第一階
第一 大勲位 一 菊花章頸飾 二 菊花大綬章第二 内閣総理大臣第三 枢密院議長第四 元勲優遇ノ為大臣ノ礼遇ヲ賜ハリタル者第五 元帥国務大臣宮内大臣内大臣第六 朝鮮総督第七 内閣総理大臣又ハ枢密院議長タル前官ノ礼遇ヲ賜ハリタル者第八 国務大臣宮内大臣又ハ内大臣タル前官ノ礼遇ヲ賜ハリタル者第九 枢密院副議長第十 陸軍大将海軍大将枢密顧問官第十一 親任官第十二 貴族院議長衆議院議長第十三 勲一等旭日桐花大綬章第十四 功一級第十五 親任官ノ待遇ヲ賜ハリタル者第十六 公爵第十七 従一位第十八 勲一等 一 旭日大綬章 二 宝冠章 三 瑞宝章 第二階
第十九 高等官一等第二十 貴族院副議長衆議院副議長第二十一 麝香間祗候第二十二 侯爵第二十三 正二位 第三階
第二十四 高等官二等第二十五 功二級第二十六 錦鶏間祗候第二十七 勅任待遇第二十八 伯爵第二十九 従二位第三十 勲二等 一 旭日重光章 二 宝冠章 三 瑞宝章第三十一 子爵第三十二 正三位第三十三 従三位第三十四 功三級第三十五 勲三等 一 旭日中綬章 二 宝冠章 三 瑞宝章第三十六 男爵第三十七 正四位第三十八 従四位 第四階
第三十九 貴族院議員衆議院議員第四十 高等官三等第四十一 高等官三等ノ待遇ヲ享クル者第四十二 功四級第四十三 勲四等 一 旭日小綬章 二 宝冠章 三 瑞宝章第四十四 正五位第四十五 従五位 第五階
第四十六 高等官四等第四十七 高等官四等ノ待遇ヲ享クル者第四十八 功五級第四十九 勲五等 一 双光旭日章 二 宝冠章 三 瑞宝章第五十 正六位 第六階
第五十一 高等官五等第五十二 高等官五等ノ待遇ヲ享クル者第五十三 従六位第五十四 勲六等 一 単光旭日章 二 宝冠章 三 瑞宝章 第七階
第五十五 高等官六等第五十六 高等官六等ノ待遇ヲ享クル者第五十七 正七位 第八階
第五十八 高等官七等第五十九 高等官七等ノ待遇ヲ享クル者第六十 従七位第六十一 功六級 第九階
第六十二 高等官八等第六十三 高等官八等ノ待遇ヲ享クル者 第十階
第六十四 高等官九等第六十五 奏任待遇第六十六 正八位第六十七 功七級第六十八 勲七等 一 青色桐葉章 二 宝冠章 三 瑞宝章第六十九 従八位第七十 勲八等 一 白色桐葉章 二 宝冠章 三 瑞宝章第三十条 同順位ノ者ノ間ニ在リテハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外其ノ身位ヲ得タル日ノ前後ニ従ヒ其ノ前後ナキトキハ其ノ日ニ有シタル席次ノ順序ニ従ヒ其ノ日ニ席次有セサリシトキハ年齢ノ順序ニ従フ
2 同爵者間ノ席次ハ位階ニ依ル
第三十一条 大臣ノ礼遇又ハ前官ノ礼遇ヲ賜ハリタル者ニシテ其ノ順位ヲ超エタル官ニ任セラレ退官ノ後更ニ前ニ賜ハリタル礼遇ト同順位ノ礼遇ヲ賜ハリタルトキハ前ニ礼遇ヲ賜ハリタル時有シタル席次ニ依リ後ノ礼遇前ノ礼遇ノ下ナルトキハ第三十四条ノ例ニ依ル
第三十二条 親任官ニシテ国務大臣ニ任セラレ退官ノ後二年以内ニ更ニ前ト同順位ノ親任官ニ任セラレタルトキハ前ニ有シタル席次ニ依リ前ノ順位ヨリ降リタル官ニ任セラレタルトキハ第三十四条ノ例ニ依ル
第三十三条 退官退職ノ日ヨリ二年以内ニ前官職ト同順位ノ官職ニ就キタルトキハ前ニ有シタル席次ニ依ル
第三十四条 転官転職ノ場合ニ於テ其ノ官職同順位ナルトキハ前ニ有シタル席次ニ依リ前ノ順位ヨリ降リタルトキハ其ノ順位ノ首席トス
第三十五条 休職又ハ退職ノ文官及予備役後備役又ハ退役ノ者ハ各相当順位ノ下席トス
第三十六条 同一人ニシテ二箇以上ノ身位ヲ有スルトキハ其ノ高キニ従フ但シ特定ノ身位ニ依リ席次ヲ定ムル必要アルトキハ此ノ限ニ在ラス
第三十七条 妻ノ席次ハ夫ニ次ク
第三十八条 官職ヲ有スル者ニ就キ職務上ノ必要アルトキハ前数条ノ規定ニ拘ラス特ニ席次ヲ定ムルコトヲ得
附 則
1 本令ハ大正十五年十一月一日ヨリ之ヲ施行ス
2 明治四年六月十七日布告皇族家紋制定ノ件明治二十二年宮内省達第十七号及宮中席次令ハ之ヲ廃止ス
皇室裁判令
大正15年皇室令第16号
第一章 民事訴訟
第一節 皇室典範第四十九条ノ訴訟
第一条 皇室裁判所ハ皇室典範第四十九条ノ訴訟ヲ裁判ス皇室親族令第四十七条ノ規定ニ依ル訴訟亦同シ
2 皇室裁判所ハ臨時必要ニ応シ之ヲ置ク
第二条 皇室裁判所ハ皇室裁判員七人ヲ以テ組織ス
第三条 皇室裁判員ハ枢密院議長枢密院副議長枢密顧問官大審院長及勅任判事ノ中ヨリ宮内大臣ノ奏請ニ依リ之ヲ勅命ス
2 皇室裁判員中一人ヲ裁判長トシ宮内大臣ノ奏請ニ依リ之ヲ勅命ス
第四条 皇室裁判所ニ書記官及書記ヲ置ク
2 書記官ハ宮内奏任官書記ハ宮内判任官ノ中ヨリ宮内大臣之ヲ命ス
3 書記官ハ訴訟書類ノ調製送達及裁判ノ執行並庶務ヲ掌理ス
4 書記ハ上官ノ指揮ヲ承ケ庶務ニ従事ス
第五条 皇室裁判所ハ裁判ノ執行ヲ管轄ス
第六条 訴ヲ提起スルニハ訴状ヲ宮内大臣ニ提出スヘシ
2 宮内大臣訴ヲ提起スルニハ先ツ皇室裁判所ノ組織ヲ奏請シ其ノ組織成リタル後之ニ訴状ヲ提出スヘシ
第七条 訴状ニハ当事者法定代理人請求ノ趣旨及原因並年月日ヲ記載シ原告又ハ其ノ法定代理人之ニ署名捺印スヘシ
第八条 弁論及裁判ハ之ヲ公行セス
第九条 皇室裁判所ハ司法裁判所ニ法律上ノ輔助ヲ求ムルコトヲ得
第十条 宮内大臣ハ訴訟ニ関シ報告ヲ求メ意見書ヲ提出シ又ハ弁論ニ立会ヒ意見ヲ述フルコトヲ得
第十一条 判決ハ書面ヲ以テス
2 判決書ニハ左ノ事項ヲ記載シ皇室裁判員署名捺印スヘシ
一 当事者及法定代理人
二 主文
三 事実
四 理由
五 年月日
第十二条 皇室裁判所ノ職務終リタルトキハ裁判長ハ記録ヲ宮内大臣ニ引継クヘシ
第十三条 訴訟手続及裁判ノ執行ニ関スル規定ハ本令ニ別段ノ定アルモノヲ除クノ外皇室裁判所勅裁ヲ経テ之ヲ定ム
第二節 皇族人民間ノ民事訴訟
第十四条 皇族人民間ノ民事訴訟ニ付テハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外一般ノ法令ニ依ル但シ皇族ニ対シテハ仮執行督促手続仮差押及仮処分ニ関スル規定ヲ適用セス
第十五条 人民ノ皇族ニ対スル民事訴訟ノ第一審及第二審ハ東京控訴院ノ管轄ニ属ス但シ第一審ノ訴訟手続ハ地方裁判所ノ第一審手続ニ関スル規定ニ依ル
第十六条 当事者タル皇族ノ訊問ハ其ノ所在ニ就キ之ヲ為スヘシ
第十七条 第十四条及第十五条ノ規定ハ宮内大臣民事訴訟ノ当事者タル場合ニ之ヲ準用ス
第二章 刑事訴訟
第一節 司法裁判所ノ裁判権ニ属スル刑事訴訟
第十八条 皇族ニ対スル刑事訴訟ハ軍法会議ノ裁判権ニ属スルモノヲ除クノ外大審院ノ管轄ニ属ス
第十九条 大審院ニ於テハ大審院長及勅任判事ヲ以テ組織シタル部ニ於テ審判ヲ為ス
第二十条 捜査ハ検事総長ノ指揮ニ依ル
第二十一条 検事総長予審ヲ請求シタルトキハ大審院長ハ其ノ院ノ判事ニ予審ヲ命ス但シ事宜ニ依リ他ノ裁判所ノ判事ヲシテ予審ヲ為サシムルコトヲ得
第二十二条 公判ニハ検事総長立会フヘシ
第二十三条 皇族ニ対スル刑事訴訟ノ手続ハ総テ刑事訴訟法第四編ノ規定ニ依ル
第二十四条 皇族ニ対スル刑事訴訟ニ付テハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外一般ノ法令ニ依ル
2 皇族ニ対スル刑ノ執行手続ハ司法大臣勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第二節 軍法会議ノ裁判権ニ属スル刑事訴訟
第二十五条 陸軍軍法会議法海軍軍法会議法及附属法令ノ規定ハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外皇族ニ之ヲ適用ス
2 皇族ニ対スル刑ノ執行手続ハ陸軍大臣又ハ海軍大臣勅裁ヲ以テ之ヲ定ム
第二十六条 皇族ノ犯罪ハ高等軍法会議ニ於テ之ヲ審判ス
2 高等軍法会議ノ裁判官ハ大将タル判士三人及法務官二人ヲ以テ之ニ充ツ
第二十七条 捜査ハ陸軍大臣又ハ海軍大臣ノ指揮ニ依ル
第三章 補則
第二十八条 皇族ニ対スル書類ノ送達ハ裁判長宮内大臣ニ嘱託シテ之ヲ為ス
第二十九条 皇族証人ナルトキハ其ノ所在ニ就キ訊問ヲ為スヘシ
第三十条 本令ノ適用ニ関シ親族関係ハ皇室親族令ノ定ムル所ニ依ル但シ血族ハ六親等内ニ限リ之ヲ親族トス
第三十一条 押収捜索其ノ他ノ強制処分ハ皇族ニ付テハ勅許ヲ得且宮内高等官ノ立会アルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第三十二条 人民相互ノ民事訴訟及人民ニ対スル刑事訴訟ニ付テハ本令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外一般ノ法令ハ皇族ニモ亦之ヲ適用ス
附 則
第三十三条 宮内大臣ヲ当事者トスル民事ノ訴訟ニシテ本令施行ノ際現ニ繋属スルモノハ仍従前ノ例ニ依ル
皇室会議令
明治40年2月28日皇室令第1号
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ皇族会議令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
皇族会議令
第一条 皇族会議ハ勅命ヲ以テ之ヲ召集ス
第二条 皇族会議ハ皇室典範第十九条第二項ノ場合ニ於テハ摂政タルヘキ順位ニ在ル成年皇族男子之ヲ召集ス
第三条 皇族会議ハ皇室典範第二十五条ノ場合ニ於テハ次ニ摂政タルヘキ順位ニ在ル成年皇族男子之ヲ召集ス
第四条 前二条ノ場合ニ於テ皇族会議ノ招集ハ成年皇族男子三分ノ一以上又ハ枢密顧問ノ請求ニ依リ之ヲ行フ
第五条 皇族会議ハ皇室典範第九条第六十二条ノ場合ニ於テハ皇族会議員三分ノ二以上其ノ他ノ場合ニ於テハ半数以上出席スルニ非サレハ議決ヲ為スコトヲ得ス
第六条 皇族会議ハ皇室典範第十九条第二項第二十五条ノ場合ニ於テハ会議ヲ招集シタル皇族ヲ以テ議長トス但シ会議ヲ招集シタル皇族出席セサルトキハ出席者中上席者ヲ以テ議長トス
第七条 皇室典範第五十五条ニ依リ皇族会議ニ参列スル者ハ議事ニ就キ意見ヲ陳述スルコトヲ得ルモ表決ノ数ニ加ハラス
第八条 皇族会議ノ議事ハ皇室典範第九条第六十二条ノ場合ニ於テハ出席者三分ノ二以上ノ多数ニ依リ其ノ他ノ場合ニ於テハ過半数ニ依リ之ヲ決ス
第九条 皇族会議員ハ自己ノ利害ニ関係スル議事ニ付キ表決ノ数ニ加ハルコトヲ得ス第十条 皇族会議ノ議決ハ天皇議事ヲ統理セラレサルトキハ議長ヨリ之ヲ上奏スヘシ
第十一条 皇室典範第十九条第二項第二十五条ノ場合ニ於テ皇族会議ノ議決アリタルトキハ皇族会議ノ議長ハ宮内大臣ヲシテ之ヲ枢密院議長ニ通報セシム
枢密顧問ノ請求ニ依リ皇族会議ヲ召集シタル場合ニ於テ其ノ議決枢密顧問ノ議決ト一致シタルトキハ皇族会議ノ議長ハ宮内大臣ヲシテ之ヲ内閣総理大臣ニ通報セシム
第十二条 皇族会議ノ議ニ付セラレタル議案ニ就テハ宮内大臣ヲシテ説明ノ任ニ当ラシム但シ必要ノ場合ニ於テハ特ニ説明委員ヲ勅選セラルルコトアルヘシ
第十三条 皇族会議ニ関スル事務ハ宮内大臣之ヲ官掌ス
皇族会議ノ議事ハ宮内高等官ヲシテ筆記セシメ宮内大臣之ニ署名ス
第十四条 皇族会議ノ記録ハ図書寮ニ於テ之ヲ尚蔵ス
摂政令
明治42年2月11日皇室令第2号
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ摂政令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
摂政令第一条 摂政就任スル時ハ附式ノ定ムル所ニ依リ賢所ニ祭典ヲ行ヒ且就任ノ旨ヲ皇霊殿神殿ニ奉告ス第二条 摂政ヲ置キタルトキ又ハ摂政ノ更迭アリタルトキハ詔書ヲ以テ之ヲ公布ス第三条 摂政ヲ置ク間御名ヲ要スル公文ハ摂政御名ヲ書シ且其ノ名ヲ署スルノ外天皇大政ヲ親ラスルトキト形式ヲ異ニスルコトナシ第四条 摂政ハ其ノ任ニ在ル間刑事ノ訴追ヲ受クルコトナシ第五条 摂政止ミテ天皇大政ヲ親ラスルトキハ詔書ヲ以テ之ヲ公布ス
立儲令
明治42年2月11日皇室令第3号
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ立儲令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
立儲令第一条 皇太子ヲ立ツルノ礼ハ勅旨ニ由リ之ヲ行フ第二条 立太子ノ礼ヲ行フ期日ハ宮内大臣之ヲ公告ス第三条 立太子ノ礼ヲ行フ当日之ヲ賢所皇霊殿神殿ニ奉告シ勅使ヲシテ神宮神武天皇山陵並先帝ノ山陵ニ奉幣セシム第四条 立太子ノ礼ハ附式ノ定ムル所ニ依リ賢所大前ニ於テ之ヲ行フ第五条 立太子ノ詔書ハ其ノ礼ヲ行フ当日之ヲ公布ス第六条 立太子ノ礼訖リタルトキハ皇太子皇太子妃ト共ニ賢所皇霊殿神殿ニ謁ス第七条 立太子ノ礼訖リタルトキハ皇太子皇太子妃ト共ニ天皇皇后太皇太后皇太后ニ朝見ス第八条 立太子ノ礼訖リタルトキハ宮中ニ於テ饗宴ヲ賜フ第九条 前各条ノ規定ハ皇太孫ヲ立ツルノ礼ニ之ヲ準用ス
皇室成年式令
明治42年2月11日皇室令第4号
朕皇室成年式令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
皇室成年式令
第一章 天皇成年式
第一条 天皇成年ニ達シタルトキハ其ノ当日成年式ヲ行フ但シ事故アルトキハ其ノ期日ヲ延フルコトアルヘシ
第二条 天皇成年式ヲ行フ期日ハ宮内大臣之ヲ公告ス
第三条 天皇成年式ヲ行フ当日之ヲ賢所皇霊殿神殿ニ奉告シ勅使ヲシテ神宮神宮神武天皇山陵並先帝先后ノ山陵ニ奉幣セシム
第四条 天皇ノ成年式ハ附式ノ定ムル所ニ依リ賢所大前ニ於テ之ヲ行フ
第五条 天皇成年式ヲ訖リタルトキハ皇霊殿神殿ニ謁ス
第六条 天皇成年式ヲ訖リタルトキハ太皇太后皇太后ニ謁ス
第七条 天皇成年式ヲ訖リタルトキハ正殿ニ御シ朝賀ヲ受ク
第八条 天皇成年式ヲ訖リタルトキハ宮中ニ於テ饗宴ヲ賜フ
第二章 皇族成年式
第九条 皇太子皇太孫親王王成年ニ達シタルトキハ其ノ当日附式ノ定ムル所ニ依リ賢所大前ニ於テ成年式ヲ行フ但シ事故アルトキハ勅許ヲ経テ其ノ期日ヲ延フルコトヲ得
第十条 皇太子皇太孫成年式ヲ行フ当日之ヲ賢所皇霊殿神殿ニ奉告ス
第十一条 皇太子皇太孫親王王成年式ヲ訖リタルトキハ天皇皇后太皇太后皇太后ニ朝見ス
第十二条 皇太子皇太孫ノ成年式ニハ第二条第五条及第八条ノ規定ヲ準用シ親王王ノ成年式ニハ第五条ノ規定ヲ準用ス
第十三条 親王王成年式ヲ訖リタルトキハ其ノ当日宮内大臣之ヲ公告ス
皇室服喪令
明治42年6月11日皇室令第12号
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ皇室服喪令ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
皇室服喪令
第一章 総則
第一条 父、母、夫ノ喪ハ一年トス
第二条 祖父母、父ノ父母、妻ノ喪ハ百五十日トス
第三条 曾祖父母、母方祖父母、父の兄弟姉妹、兄弟姉妹ノ喪ハ九十日トス
第四条 高祖父母、摘母、継母、夫ノ祖父母、母ノ兄弟姉妹、父ノ異父兄弟姉妹、異父兄弟姉妹、子ノ喪ハ三十日トス
第五条 男系ノ孫、父ノ兄弟ノ子、母ノ異父兄弟姉妹、兄弟ノ子、夫ノ摘母継母、妻ノ父母ノ喪ハ七日トス
第六条 母方高祖父母、母方曾祖父母、男系ノ曾孫玄孫、父ノ姉妹ノ子、姉妹ノ子、異父兄弟姉妹ノ子、母ノ兄弟姉妹ノ子、女系ノ孫ノ喪ハ五日トス
第七条 七歳未満ノ殤ニハ喪ヲ服セス
第八条 天皇ハ皇族ニ非サル親族ノ為ニハ喪ヲ服セス
第九条 皇族ハ同族又ハ華族ニ非サル親族ノ為ニハ喪ヲ服セス
第十条 第四条乃至第六条ノ規定ハ華族ノ家ニ在ル者ノ為ニハ之ヲ適用セス但シ皇族ヨリ華族ニ列セラレ又ハ華族ノ家ニ入リタル者ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
第十一条 華族ノ養女ニシテ皇族ニ嫁シタル者ハ養方ノ親族ノ為ニモ亦第一条乃至第三条ノ規定ニ従ヒ喪ヲ服ス
第十二条 二様ノ親族関係アルトキハ喪ハ其ノ重ニ従フ
第十三条 両喪重複スルトキハ重複ノ間其ノ重ニ従フ
第十四条 服喪ノ日数ハ崩御薨去又ハ死亡ノ日ヨリ起算ス
第十五条 大喪ニハ皇族及臣民喪ヲ服ス
宮中喪ニハ皇族及宮内官喪ヲ服ス
前二項ノ規定ハ神祗ニ奉仕スル職員ニハ之ヲ適用セス
皇族親族ノ喪ニ丁ルトキハ其ノ附属ノ宮内官喪ヲ服ス
第十六条 皇太子皇太子妃皇太孫妃薨去ノ場合ニ於テハ其ノ日ヨリ三日間及喪儀ヲ行フ当日臣民喪ヲ服ス但シ七歳未満ノ殤ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
親王親王妃内親王王王妃女王国葬ノ場合ニ於テハ喪儀ヲ行フ当日臣民喪ヲ服ス
第十七条 特別ノ事由ノ為除喪スルハ臨時ノ勅定ニ依ル
第十八条 喪服ニ関スル規定ハ勅定ニ依リ宮内大臣之ヲ公告ス
第二章 大喪
第十九条 天皇大行天皇太皇太后皇太后皇后ノ喪ニ丁ルトキハ大喪トス
第二十条 天皇ハ第二条乃至第七条ノ規定ニ拘ラス大行天皇及皇太后ノ為ニハ一年ノ喪ヲ服シ太皇太后ノ為ニハ百五十日ノ喪ヲ服ス第
二十一条 大行天皇及皇太后ノ為ニスル大喪ヲ諒闇トス皇妣タル太皇太后ノ為ニスル大喪亦同シ
第二十二条 大喪ニ関スル事項ハ宮内大臣之ヲ公告ス
第三章 宮中喪
第二十三条 天皇喪ニ丁ルトキハ大喪ヲ除クノ外宮中喪トス
第二十四条 天皇ハ第四条及第五条ノ規定ニ拘ラス皇太子皇太孫ノ為ニハ九十日ノ喪ヲ服ス七歳未満ノ殤ニハ第七条ノ規定ニ拘ラス三日ノ喪ヲ服ス
第二十五条 天皇ハ親族関係ニ拘ラス皇太子妃皇太孫妃ノ為ニハ三十日ノ喪ヲ服ス
第二十六条 服喪範囲外ノ皇族ノ為ニハ特ニ五日以内ノ宮中喪ヲ発スルコトアルヘシ
第二十七条 外国ノ凶訃ニハ特ニ宮中喪ヲ発スルコトアルヘシ
第二十八条 宮中喪ニ関スル事項ハ宮内大臣之ヲ公告ス
第四章 喪期区分
第二十九条 一年ノ喪ハ之ヲ三期ニ分チ第一期第二期ハ各五十日トシ残ル日数ヲ以テ第三期トス
第三十条 百五十日ノ喪ハ之ヲ三期ニ分チ第一期第二期ハ各三十日トシ第三期ハ九十日トス
第三十一条 九十日ノ喪ハ之ヲ二期ニ分チ第一期ハ二十日トシ第二期ハ七十日トス
第三十二条 三十日ノ喪ハ之ヲ二期ニ分チ第一期ハ十日トシ第二期ハ二十日トス
第三十三条 七日以下ノ喪ハ期ヲ分タス
天津神の御神敕(修理固成)
古事記上卷
(ここにあまつかみもろもろのみこともちて、いざなぎのみこと、いざなみのみこと、ふたはしらのかみに、「このただよへるくにををさめつくりかためなせ」とのりて、あめのぬぼこをたまひて、ことよさしたまひき。かれ、ふたはしらのかみ、あめのうきはしにたたして、そのぬぼこをさしおろしてかきたまへば、しほこをろこをろにかきなしてひきあげたまふとき、そのほこのさきよりしただりおつるしほ、かさなりつもりてしまとなりき。これおのごろじまなり。)
天照大神の三大御神敕(天壌無窮、宝鏡奉斎、斎庭稲穂)
1 天壤無窮の御神敕因敕皇孫曰、葦原千五百秋之瑞穗國、是吾子孫可王之地也。宜爾皇孫、就而治焉。行矣。寶祚之隆、當與天壤無窮者矣。(日本書紀卷第二神代下第九段一書第一)
(よりて、すめみまににみことのりしてのたまはく、「あしはらのちいほあきのみづほのくには、これ、わがうみのこのきみたるべきくになり。いましすめみま、いでましてしらせ。さまくませ。あまのひつぎのさかえまさむこと、まさにあまつちときはまりなけむ。」とのたまふ。)
2 寶鏡奉齋の御神敕① 是時、天照大神、手持寶鏡、授天忍穗耳尊、而祝之曰、吾兒視此寶鏡、當猶視吾。可與同床共殿、以爲齋鏡。(日本書紀卷第二神代下第九段一書第二)
(このときに、あまてらすおほみかみ、てにたからのかがみをもちたまひて、あめのおしほみみのみことにさづけて、ほきてのたまはく、「わがこ、このたからのかがみをみまさむこと、まさにわをみるがごとくすべし。ともにゆかをおなじくしおほとのをひとつにして、いはひのかがみとすべし」とのたまふ。)
② 詔者、此之鏡者、專爲我御魂而、如拜吾前、伊都岐奉。次思金神者、取持前事爲政。(古事記上卷)
(みことのりたまひしく、「これのかがみは、もはらわがみたまとして、わがまへをいつくがごといつきまつれ。つぎにおもひかねのかみは、まえのことをとりみもちて、まつりごとせよ」とのりたまひき。)
3 齋庭稻穗の御神敕又敕曰、以吾高天原所御齋庭之穗、亦當御於吾兒。(日本書紀卷第二神代下第九段一書第二)
(またみことのりしてのたまはく、「わがたかまのはらにきこしめすゆにはのいなのほをもちて、またわがみこにまかせまつるべし」とのたまふ。)
神武天皇の御詔敕(八紘爲宇)
日本書紀卷第三神武天皇即位前己未年三月
上則答乾靈授國之德、下則弘皇孫養正之心。然後、兼六合以開都、掩八紘而爲宇、不亦可乎。
(かみはあまつかみのくにをさづけたまひしみうつくしびにこたへ、しもはすめみまのただしきみちをやしなひたまひしみこころをひろめむ。しかうしてのちに、くにのうちをかねてみやこをひらき、あめのしたをおほひていへにせむこと、またよからずや。)
憲法十七條(日本書紀卷第廿二)
推古天皇十二年四月(皇紀一千二百六十四年)
夏四月の丙寅の朔戊辰に、皇太子、親ら肇めて憲法十七條作りたまふ。
一つに曰はく、和なるを以て貴しとし、忤ふること無きを宗とせよ。人皆黨有り。亦達る者少し。是を以て、或いは君父に順はず。乍隣里に違ふ。然れども、上和ぎ下睦びて、事を論ふに諧ふときは、事理自づからに通ふ。何事か成らざらむ。
二に曰はく、篤く三寶を敬へ。三寶とは佛・法・僧なり。則ち四生の終歸、萬の國の極宗なり。何の世、何の人か、是の法を貴びずあらむ。人、尤惡しきもの鮮し。能く教ふるをもて從ふ。其れ三寶に歸りまつらずは、何を以てか枉れるを直さむ。
三に曰はく、詔を承りては必ず謹め。君をば天とす。臣をば地とす。天は覆ひ地は載す。四時順ひ行ひて、萬氣通ふこと得。地、天を覆はむとするときは、壞るることを致さむ。是を以て、君言たまふことをば臣承る。上行ふときは下靡く。故、詔を承りては必ず愼め。謹まずは自づからに敗れなむ。
四に曰はく、群卿百寮、禮を以て本とせよ。其れ民を治むるが本、要ず禮に在り。上禮なきときは、下齋らず。下禮なきときは、必ず罪有り。是を以て、群臣禮有るときは、位の次亂れず。百姓禮有るときは、國家自づからに治る。
五に曰はく、餮を絶ち欲することを棄てて、明に訴訟を辨めよ。其れ百姓の訟、一日の千事あり。一日すらも尚爾るを、況や歳を累ねてをや。頃訟を治むる者、利を得て常とし、賄を見ては獻すを聽く。便ち財有るものが訟は、石をもて水に投ぐるが如し。乏しき者の訴は、水をもて石に投ぐるに似たり。是を以て貧しき民は、所由を知らず。臣の道亦焉に闕けぬ。
六に曰はく、惡を懲し善れを勸むるは、古の良き典なり。是を以て人の善を匿すこと无く、惡を見ては必ず匡せ。其れ諂い詐く者は、國家を覆す利き器なり、人民を絶つ鋒き劒なり。亦佞み媚ぶる者、上に對ひては好みて下の過を説き、下に逢ひては上の失を誹謗る。其れ如此の人、皆君に忠无く、民に仁无し。是大きなる亂の本なり。
七に曰はく、人各任有り。掌ること濫れざるべし。其れ賢哲官に任すときは、頌むる音則ち起る。奸しき者官を有つときは、禍亂則ち繁し。世に生れながら知るひと少し。剋く念ひて聖と作る。事に大きなり少き無く、人を得て必ず治らむ。時に急き緩きこと無し。賢に遇ひて自づからに寛なり。此に因りて國家永久にして、社禝危うからず。故、古の聖王、官の爲に人を求めて、人の爲に官を求めず。
八に曰はく、群卿百寮、早く朝りて晏く退でよ。公事鹽靡し。終日に盡し難し。是を以て、遲く朝るときは急きに逮ばず。早く退づるときは必ず事盡きず。
九に曰はく、信は是義の本なり。事毎に信有るべし。其れ善惡成敗、要ず信に在り。群臣共に信あらば、何事か成らざらむ。群臣信无くは、萬の事悉に敗れむ。
十に曰はく、忿を絶ち瞋を棄てて、人の違ふこと怒らざれ。人皆心有り。心各執れること有り。彼是すれば我は非す。我是すれば彼は非す。我必ず聖に非ず。彼必ず愚に非ず。共に是凡夫ならくのみ。是く非き理、・か能く定むべけむ。相共の賢く愚なること、鐶の端无きが如し。是を以て、彼人瞋ると雖も、還りて我が失を恐れよ。我獨り得たりと雖も、衆に從ひて同じく擧へ。
十一に曰はく、功過を明に察て、賞し罰ふること必ず當てよ。日者、賞は功に在きてせず。罰は罪に在きてせず。事を執れる群卿、賞し罰ふることを明むべし。
十二に曰はく、國司・國造、百姓に斂らざれ。國に二の君非ず。民に兩の主無し。率土の兆民は、王を以て主とす。所任る官司は、皆是王の臣なり。何にぞ敢へて公と、百姓に賦斂らむ。
十三に曰はく、諸の官に任せる者、同じく職掌を知れ。或いは病し或いは使として、事を闕ること有り。然れども知ること得る日には、和ふこと曾より識れる如くにせよ。其れ與り聞かずといふを以て、公の務をな妨げそ。
十四に曰はく、群臣百寮、嫉み妬むこと有ること無れ。我既に人を嫉むときは、人亦我を嫉む。嫉み妬み患、其の極を知らず。所以に、智己に勝るときは悦びず。才己に優るときは嫉妬む。是を以て、五百にして乃今賢に遇ふ。
千載にして一の聖を待つこと難し。其れ賢聖を得ずは、何を以てか國を治めむ。
十五に曰はく、私を背きて公に向くは、是臣が道なり。凡て人私有るときは、必ず恨有り。憾有るときは必ず同らず。同からざるときは私を以て公を妨ぐ。憾起るときは制に違ひ法を害る。故、初の章に云へらく、上下和ひ諧れ、といへるは、其れ亦是の情なるかな。
十六に曰はく、民を使ふに時を以てするは、古の良き典なり。故、冬の月に間有らば、以て民を使ふべし。春より秋に至るまでに、農桑の節なり。民を使ふべからず。其れ農せずは何をか食はむ。桑せずは何をか服む。
十七に曰はく、夫れ事獨り斷むべからず。必ず衆と論ふべし。少き事は是輕し。必ずしも衆とすべからず。唯大きなる事を論ふに逮びては、若しは失有ることを疑ふ。故、衆と相辨ふるときは、辭則ち理を得。
推古天皇の御詔敕(日本書紀卷第廿二)
推古天皇十五年二月(皇紀一千二百六十七年)
戊子、詔曰、朕聞之、曩者我皇祖天皇等宰世也、跼天蹐地、敦禮神祇。周祠山川、幽通乾坤。是以、陰陽開和、造化共調。今當朕世、祭祀神祇、豈有怠乎。故群臣共爲竭心、宜拜神祇。甲午、皇太子及大臣、率百寮以祭拜神祇。
(つちのえねのひ(九日)に、みことのりしてのたまはく、「われきく、むかし、わがみおやのすめらみことたち、よををさめたまふこと、あめにせかがまりつちにぬきあしにふみて、あつくあまつかみくにつかみをゐやびたまふ。あまねくやまかはをまつり、はるかにあめつちにかよはす。ここをもちて、ふゆなつひらけあまなひて、なしいづることともにととのほる。いまわがよにあたりて、あまつかみくにつかみをいはひまつること、あにおこたることあらむや。かれ、まへつきみたち、ともにためにこころをつくして、あまつかみくにつかみをゐやびまつるべし」とのたまふ。きのえうまのひ(十五日)に、ひつぎのみことおほおみと、つかさつかさをゐて、あまつかみくにつかみをいはひゐやぶ。)
船中八策(舟中八策)
慶應三年(皇紀二千五百二十七年)六月
一 天下ノ政權ヲ朝廷ニ奉還セシメ、政令宜シク朝廷ヨリ出ヅベキ事
一 上下議政局ヲ設ケ、議員ヲ置キテ萬機ヲ參贊セシメ、萬機宜シク公議ニ決スベキ事
一 有材ノ公卿、諸侯及ビ天下ノ人材ヲ顧問ニ備ヘ、官爵ヲ賜ヒ、宜シク從來有名無實ノ官ヲ除クベキ事
一 外國ノ交際廣ク公議ヲ採リ、新ニ至當ノ規約ヲ立ツベキ事
一 古來ノ律令ヲ折衷シ、新ニ無窮ノ大典ヲ撰定スベキ事
一 海軍宜シク擴張スベキ事
一 御親兵ヲ置キ、帝都ヲ守衞セシムベキ事
一 金銀物貨、宜シク外國ト平均ノ法ヲ設クベキ事
以上ノ八策ハ、方今天下ノ形勢ヲ察シ、之ヲ宇内萬國ニ徴スルニ、之ヲ捨テヽ他ニ濟時ノ急務アルベナシ 苟モ此ノ數策ヲ斷行セバ、皇運ヲ挽回シ國勢ヲ擴張シ、萬國ト竝立スルモ亦敢テ難シトセズ 伏テ願クハ、公明正大ノ道理ニ基キ、一大英斷ヲ以テ天下ト更始一新セン
五箇條ノ御誓文
慶應四年(皇紀二千五百二十八年)三月十四日
一 廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ決スヘシ
一 上下心ヲ一ニシテ盛ニ經綸ヲ行フヘシ
一 官武一途庶民ニ至ル迄各其ノ志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメンコトヲ要ス
一 舊來ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ
一 智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ
我國未曾有ノ變革ヲ爲サントシ朕躬ヲ以テ衆ニ先ンジ天地神明ニ誓ヒ大ニ斯國是ヲ定メ萬民保全ノ道ヲ立ントス衆亦此旨趣ニ基キ協心努力セヨ
神器及ヒ皇靈遷座ノ詔
明治四年九月十四日
朕恭ク惟ミルニ神器ハ天祖威靈ノ憑ル所歴世聖皇ノ奉シテ以テ天職ヲ治メ玉フ所ノ者ナリ今ヤ朕不逮ヲ以テ復古ノ運ニ際シ忝ク鴻緒ヲ承ク新ニ神殿ヲ造リ神器ト列聖皇靈トヲコヽニ奉安シ仰テ以テ萬機ノ政ヲ視ントス爾群卿百僚其レ斯旨ヲ體セヨ
勤儉ノ敕語
明治十二年三月十日
朕幼冲ニシテ國ノ艱難ニ際シ祖宗ノ威靈ト諸臣ノ力ニ賴リ中興ノ大業ヲ成スコトヲ得タリ惟世運實ニ非常ノ機ニ當リ猶ホ成ルヲ樂ムノ日ニアラス内祖宗ノ國光ヲ墜サス外各國ト對峙セントス朕菲德何ヲ以テ之ニ堪ヘン今親ク民事ヲ察スルニ生産未タ振ハス富庶ノ實或ハ未タ進ムコトヲ加ヘス朕深ク以テ憂トナス茲ニ念フ興國ノ本ハ勤儉ニアリ祖宗實ニ勤儉ヲ以テ國ヲ建ツ今マ富強ノ實未タ擧ラスシテ遽ニ奢侈ノ弊ヲ踏ムアラハ責メ朕カ躬ニアリ朕誡ム己レヲ勵シ天下ノ標準ヲ爲サンコトヲ思フ諸臣ニ誥ク宮禁ノ土木其レ務メテ儉素ニ就キ進御ノ物其務メテ質朴ヲ用ヰ冗費ヲ省略シテ以テ業ヲ勸メ本ヲ培フノ資ニ充テヨ諸臣其レ民ヲ富シ生ヲ厚クスルノ謀アラハ各見ル所ヲ盡シ以テ朕カ逮ハサルヲ輔ケヨ
陸海軍軍人に賜はりたる敕諭(軍人敕諭)
明治十五年一月四日
我國の軍隊は世々天皇の統率し給ふ所にそある昔神武天皇躬つから大伴物部の兵ともを率ゐ中國のまつろはぬものともを討ち平け給ひ高御座に即かせられて天下しろしめし給ひしより二千五百有餘年を經ぬ此間世の樣の移り換るに随ひて兵制の沿革も亦屡なりき古は天皇躬つから軍隊を率ゐ給ふ御制にて時ありては皇后皇太子の代らせ給ふこともありつれと大凡兵權を臣下に委ね給ふことはなかりき中世に至りて文武の制度皆唐國風に傚はせ給ひ六衞府を置き左右馬寮を建て防人なと設けられしかは兵制は整ひたれとも打續ける昇平に狃れて朝廷の政務も漸文弱に流れけれは兵農おのつから二に分れ古の徴兵はいつとなく壮兵の姿に變り遂に武士となり兵馬の權は一向に其武士ともの棟梁たる者に歸し世の亂と共に政治の大權も亦其手に落ち凡七百年の間武家の政治とはなりぬ世の樣の移り換りて斯なれるは人力もて挽回すへきにあらすとはいひなから且は我國體に戻り且は我祖宗の御制に背き奉り淺間しき次第なりき降りて弘化嘉永の頃より德川の幕府其政衰へ剩外國の事とも起りて其侮をも受けぬへき勢に迫りけれは朕か皇祖仁孝天皇皇考孝明天皇いたく宸襟を惱し給ひしこそ忝くも又惶けれ然るに朕幼くして天津日嗣を受けし初征夷大將軍其政權を返上し大名小名其版籍を奉還し年を經すして海内一統の世となり古の制度に復しぬ是文武の忠臣良弼ありて朕を輔翼せる功績なり歴世祖宗の專蒼生を憐み給ひし御遺澤なりといへとも併我臣民の其心に順逆の理を辨へ大義の重きを知れるか故にこそあれされは此時に於て兵制を更め我國の光を耀さんと思ひ此十五年か程に陸海軍の制をは今の樣に建定めぬ夫兵馬の大權は朕か統ふる所なれは其司々をこそ臣下には委すなれ其大綱は朕親之を攬り肯て臣下に委ぬへきものにあらす子々孫々に至るまて篤く斯旨を傳へ天子は文武の大權を掌握するの義を存して再中世以降の如き失體なからんことを望むなり朕は汝等軍人の大元帥なるそされは朕は汝等を股肱と賴み汝等は朕を頭首と仰きてそ其親は特に深かるへき朕か國家を保護して上天の惠に應し祖宗の恩に報いまゐらする事を得るも得さるも汝等軍人か其職を盡すと盡ささるとに由るそかし我國の稜威振はさることあらは汝等能く朕と其憂を共にせよ我武維揚りて其榮を耀さは朕汝等と其譽を偕にすへし汝等皆其職を守り朕と一心になりて力を國家の保護に盡さは我國の蒼生は永く太平の福を受け我國の威烈は大に世界の光華ともなりぬへし朕斯も深く汝等軍人に望むなれは猶訓諭すへき事こそあれいてや之を左に述へむ
一 軍人は忠節を盡すを本分とすへし凡生を我國に稟くるもの誰かは國に報ゆるの心なかるへき況して軍人たらん者は此心の固からては物の用に立ち得へしとも思はれす軍人にして報國の心堅固ならさるは如何程技藝に熟し學術に長するも猶偶人にひとしかるへし其隊伍も整ひ節制も正くとも忠節を存せさる軍隊は事に臨みて烏合の衆に同かるへし抑國家を保護し國權を維持するは兵力に在れは兵力の消長は是國運の盛衰なることを辨へ世論に惑はす政治に拘らす只々一途に己か本分の忠節を守り義は山嶽よりも重く死は鴻毛よりも輕しと覺悟せよ其操を破りて不覺を取り汚名を受くるなかれ
一 軍人は禮儀を正しくすへし凡軍人には上元帥より下一卒に至るまて其間に官職の階級ありて統屬するのみならす同列同級とても停年に新舊あれは新任の者は舊任のものに服從すへきものそ下級のものは上官の命を承ること實は直に朕か命を承る義なりと心得よ己か隷屬する所にあらすとも上級の者は勿論停年の己より舊きものに對しては總へて敬禮を盡すへし又上級の者は下級のものに向ひ聊も輕侮驕傲の振舞あるへからす公務の爲に威嚴を主とする時は格別なれとも其外は務めて懇に取扱ひ慈愛を專一と心掛け上下一致して王事に勤勞せよ若軍人たるものにして禮儀を紊り上を敬はす下を惠ますして一致の和諧を失ひたらむには啻に軍隊の蠧毒たるのみかは國家の爲にもゆるし難き罪人なるへし
一 軍人は武勇を尚ふへし夫武勇は我國にては古よりいとも貴へる所なれは我國の臣民たらんもの武勇なくては叶ふまし況して軍人は戰に臨み敵に當るの職なれは片時も武勇を忘れてよかるへきかさはあれ武勇には大勇あり小勇ありて同からす血氣にはやり粗暴の振舞なとせんは武勇とは謂ひ難し軍人たらむものは常に能く義理を辨へ能く坦力を練り思慮を殫して事を謀るへし小敵たりとも侮らす大敵たりとも懼れす己か武職を盡さむこそ誠の大勇にはあれされは武勇を尚ふものは常々人に接るには温和を第一とし諸人の愛敬を得むと心掛けよ由なき勇を好みて猛威を振ひたらは果は世人も忌嫌ひて豺狼なとの如く思ひなむ心すへきことにこそ
一 軍人は信義を重んすへし凡信義を守ること常の道にはあれとわきて軍人は信義なくては一日も隊伍の中に交りてあらんこと難かるへし信とは己か言を踐行ひ義とは己か分を盡すをいふなりされは信義を盡さむと思はは始より其事の成し得へきか得へからさるかを審に思考すへし朧氣なる事を假初に諾ひてよしなき關係を結ひ後に至りて信義を立てんとすれは進退谷りて身の措き所に苦むことあり悔ゆとも其詮なし始に能々事の順逆を辨へ理非を考へ其言は所詮踐むへからすと知り其義はとても守るへからすと悟りなは速に止るこそよけれ古より或は小節の信義を立てんとて大綱の順逆を誤り或は公道の理非に踐迷ひて私情の信義を守りあたら英雄豪傑ともか禍に遭ひ身を滅し屍の上の汚名を後世まて遺せること其例尠からぬものを深く警めてやはあるへき
一 軍人は質素を旨とすへし凡質素を旨とせされは文弱に流れ輕薄に趨り驕奢華靡の風を好み遂には貪汚に陥りて志も無下に賤しくなり節操も武勇も其甲斐なく世人に爪はしきせらるる迄に至りぬへし其身生涯の不幸なりといふも中々愚なり此風一たひ軍人の間に起りては彼の傳染病の如く蔓延し士風も兵氣も頓に衰へぬへきこと明なり朕深く之を懼れて曩に免黜條例を施行し略此事を誡め置きつれと猶も其惡習の出んことを憂ひて心安からねは故に又之を訓ふるそかし汝等軍人ゆめ此訓誡を等閒にな思ひそ
右の五ヶ條は軍人たらんもの暫も忽にすへからすさて之を行はんには一の誠心こそ大切なれ抑此五ヶ條は我軍人の精神にして一の誠心は又五ヶ條の精神なり心誠ならされは如何なる嘉言も善行も皆うはへの裝飾にて何の用にかは立つへき心たに誠あれは何事も成るものそかし況してや此五ヶ條は天地の公道人倫の常經なり行ひ易く守り易し汝等軍人能く朕か訓に遵ひて此道を守り行ひ國に報ゆるの務を盡さは日本國の蒼生擧りて之を悦ひなん朕一人の懌のみならんや
教育ニ関スル勅語
明治二十三年十月三十日
朕惟フニ 我カ皇祖皇宗 國ヲ肇ムルコト宏遠ニ 德ヲ樹ツルコト深厚ナリ
我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ
此レ我カ國體ノ精華ニシテ 教育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス
爾臣民 父母ニ孝ニ 兄弟ニ友ニ 夫婦相和シ 朋友相信シ
恭儉己レヲ持シ 博愛衆ニ及ホシ 學ヲ修メ業ヲ習ヒ
以テ智能ヲ啓發シ 德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ
常ニ國憲ヲ重シ 國法ニ遵ヒ 一旦緩急アレハ 義勇公ニ奉シ
以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ
是ノ如キハ 獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス
又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ 子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所
之ヲ古今ニ通シテ謬ラス 之ヲ中外ニ施シテ悖ラス
朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
義勇兵ヲ停メ給フ敕諭
明治二十七年八月七日
朕ハ祖宗ノ威靈ト臣民ノ協同トニ倚リ我カ忠武ナル陸海軍ノ力ヲ用ヰ國ノ稜威ト光榮トヲ全クセムコトヲ期ス
各地ノ臣民義勇兵ヲ團結スルノ擧アルハ其ノ忠良愛國ノ至情ニ出ルコトヲ知ル惟フニ國ニ常制アリ民ニ常業アリ非常徴發ノ場合ヲ除クノ外臣民各々其ノ常業ヲ勤ムルコトヲ怠ラス内ニハ益々生殖ヲ進メ以テ富強ノ源ヲ培フハ朕ノ望ム所ナリ義勇兵ノ如キハ現今其ノ必要ナキヲ認ム各地方官朕カ旨ヲ體シ示諭スル所アルヘシ
戊申詔書
明治四十一年十月十三日
朕惟フニ方今人文日ニ就リ月ニ將ミ東西相倚リ彼此相濟シ以テ其ノ福利ヲ共ニス朕ハ爰ニ益々國交ヲ修メ友義ヲ惇シ列國ト與ニ永ク其ノ慶ニ賴ラムコトヲ期ス顧ミルニ日進ノ大勢ニ伴ヒ文明ノ惠澤ヲ共ニセムトスル固ヨリ内國運ノ發展ニ須ツ戰後日尚淺ク庶政益々更張ヲ要ス宜ク上下心ヲ一ニシ忠實業ニ服シ勤儉産ヲ治メ惟レ信惟レ義醇厚俗ヲ成シ華ヲ去リ實ニ就キ荒怠相誡メ自彊息マサルヘシ
抑我カ神聖ナル祖宗ノ遺訓ト我カ光輝アル國史ノ成跡トハ炳トシテ日星ノ如シ寔ニ克ク恪守シ淬砺ノ誠ヲ輸サハ國運發展ノ本近ク斯ニ在リ朕ハ方今ノ世局ニ處シ我カ忠良ナル臣民ノ協翼ニ倚藉シテ維新ノ皇猷ヲ恢弘シ祖宗ノ威德ヲ對揚セムコトヲ庶幾フ爾臣民其レ克ク朕カ旨ヲ體セヨ
施療濟生ノ敕語
明治四十四年二月十一日
朕惟フニ世局ノ大勢ニ随ヒ國運ノ伸張ヲ要スルコト方ニ急ニシテ經濟ノ状況漸ニ革マリ人心動モスレハ其ノ歸向ヲ謬ラムトス政ヲ爲ス者宜ク深ク此ニ鑒ミ倍々憂勤シテ業ヲ勸メ教ヲ敦クシ以テ健全ノ發達ヲ遂ケシムヘシ若夫レ無告ノ窮民ニシテ醫藥給セス天壽ヲ終フルコト能ハサルハ朕カ最軫念シテ措カサル所ナリ乃チ施藥救療以テ濟生ノ道ヲ弘メムトス茲ニ内帑ノ金ヲ出タシ其ノ資ニ充テシム卿克ク朕カ意ヲ體シ宜キニ随ヒ之ヲ措置シ永ク衆庶ヲシテ賴ル所アラシメムコトヲ期セヨ
青少年學徒ニ下シ賜ハリタル敕語
昭和十四年五月二十二日
國本ニ培ヒ國力ヲ養ヒ以テ國家隆昌ノ氣運ヲ永世ニ維持セムトスル任タル極メテ重ク道タル甚タ遠シ而シテ其ノ任實ニ繋リテ汝等青少年學徒ノ雙肩ニ在リ汝等其レ氣節尚ヒ廉恥ヲ重ンシ古今ノ史實ニ稽ヘ中外ノ事勢ニ鑑ミ其ノ思索ヲ精ニシ其ノ識見ヲ長シ執ル所中ヲ失ハス嚮フ所正ヲ謬ラス各其ノ本分ヲ恪守シ文ヲ修メ武ヲ練リ質實剛健ノ氣風ヲ振勵シ以テ負荷ノ大任ヲ全クセムコトヲ期セヨ
大日本帝國憲法(帝國憲法)
明治二十二年二月十一日公布
同二十三年十一月二十九日施行
同二十三年十一月二十九日施行
告 文
皇朕レ謹ミ畏ミ皇祖皇宗ノ神靈ニ誥ケ白サク皇朕レ天壤無窮ノ宏謨ニ循ヒ惟神ノ寶祚ヲ承繼シ舊圖ヲ保持シテ敢テ失墜スルコト無シ顧ミルニ世局ノ進運ニ膺リ人文ノ發達ニ随ヒ宜ク皇祖皇宗ノ遺訓ヲ明徴ニシ典憲ヲ成立シ條章ヲ昭示シ内ハ以テ子孫ノ率由スル所ト爲シ外ハ以テ臣民翼贊ノ道ヲ廣メ永遠ニ遵行セシメ益々國家ノ丕基ヲ鞏固ニシ八洲民生ノ慶福ヲ增進スヘシ茲ニ皇室典範及憲法ヲ制定ス惟フニ此レ皆皇祖皇宗ノ後裔ニ貽シタマヘル統治ノ洪範ヲ紹述スルニ外ナラス而シテ朕カ躬ニ逮テ時ト倶ニ擧行スルコトヲ得ルハ洵ニ皇祖皇宗及我カ皇考ノ威靈ニ倚藉スルニ由ラサルハ無シ皇朕レ仰テ皇祖皇宗及皇考ノ神祐ヲ祷リ併セテ朕カ現在及將來ニ臣民ニ率先シ此ノ憲章ヲ履行シテ愆ラサラムコトヲ誓フ庶幾クハ神靈此レヲ鑒ミタマヘ
憲法發布敕語
朕國家ノ隆昌ト臣民ノ慶福トヲ以テ中心ノ欣榮トシ朕カ祖宗ニ承クルノ大權ニ依リ現在及將來ノ臣民ニ對シ此ノ不磨ノ大典ヲ宣布ス
惟フニ我カ祖我カ宗ハ我カ臣民祖先ノ協力輔翼ニ倚リ我カ帝國ヲ肇造シ以テ無窮ニ垂レタリ此レ我カ神聖ナル祖宗ノ威德ト竝ニ臣民ノ忠實勇武ニシテ國ヲ愛シ公ニ殉ヒ以テ此ノ光輝アル國史ノ成跡ヲ貽シタルナリ朕我カ臣民ハ即チ祖宗ノ忠良ナル臣民ノ子孫ナルヲ回想シ其ノ朕カ意ヲ奉體シ朕カ事ヲ奬順シ相與ニ和衷協同シ益々我カ帝國ノ光榮ヲ中外ニ宣揚シ祖宗ノ遺業ヲ永久ニ鞏固ナラシムルノ希望ヲ同クシ此ノ負擔ヲ分ツニ堪フルコトヲ疑ハサルナリ
朕祖宗ノ遺烈ヲ承ケ萬世一系ノ帝位ヲ踐ミ朕カ親愛スル所ノ臣民ハ即チ朕カ祖宗ノ惠撫慈養シタマヒシ所ノ臣民ナルヲ念ヒ其ノ康福ヲ增進シ其ノ懿德良能ヲ發達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼贊ニ依リ與ニ倶ニ國家ノ進運ヲ扶持セムコトヲ望ミ乃チ明治十四年十月十二日ノ詔命ヲ履踐シ茲ニ大憲ヲ制定シ朕カ率由スル所ヲ示シ朕カ後嗣及臣民及臣民ノ子孫タル者ヲシテ永遠ニ循行スル所ヲ知ラシム
國家統治ノ大權ハ朕カ之ヲ祖宗ニ承ケテ之ヲ子孫ニ傳フル所ナリ朕及朕カ子孫ハ將來此ノ憲法ノ條章ニ循ヒ之ヲ行フコトヲ愆ラサルヘシ
朕ハ我カ臣民ノ權利及財産ノ安全ヲ貴重シ及之ヲ保護シ此ノ憲法及法律ノ範圍内ニ於テ其ノ享有ヲ完全ナラシムヘキコトヲ宣言ス
帝國議會ハ明治二十三年ヲ以テ之ヲ召集シ議會開會ノ時ヲ以テ此ノ憲法ヲシテ有效ナラシムルノ期トスヘシ
將來若此ノ憲法ノ或ル條章ヲ改定スルノ必要ナル時宜ヲ見ルニ至ラハ朕及朕カ繼統ノ子孫ハ發議ノ權ヲ執リ之ヲ議會ニ付シ議會ハ此ノ憲法ニ定メタル要件ニ依リ之ヲ議決スルノ外朕カ子孫及臣民ハ敢テ之カ紛更ヲ試ミルコトヲ得サルヘシ
朕カ在廷ノ大臣ハ朕カ爲ニ此ノ憲法ヲ施行スルノ責ニ任スヘク朕カ現在及將來ノ臣民ハ此ノ憲法ニ對シ永遠ニ從順ノ義務ヲ負フヘシ
御名御璽
明治二十二年二月十一日
大 日 本 帝 國 憲 法
第一章 天皇
第一條 大日本帝國ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス
第二條 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ繼承ス
第三條 天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
第四條 天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ
第五條 天皇ハ帝國議會ノ協贊ヲ以テ立法權ヲ行フ
第六條 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
第七條 天皇ハ帝國議會ヲ召集シ其ノ開會閉會停會及衆議院ノ解散ヲ命ス
第八條 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル爲緊急ノ必要ニ由リ帝國議會閉會ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ敕令ヲ發ス
此ノ敕令ハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出スヘシ若議會ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ將來ニ向テ其ノ效力ヲ失フコトヲ公布スヘシ
第九條 天皇ハ法律ヲ執行スル爲ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ增進スル爲ニ必要ナル命令ヲ發シ又ハ發セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ變更スルコトヲ得ス
第十條 天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ條項ニ依ル
第十一條 天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第十二條 天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
第十三條 天皇ハ戰ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ條約ヲ締結ス
第十四條 天皇ハ戒嚴ヲ宣告ス
戒嚴ノ要件及效力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第十五條 天皇ハ爵位勳章及其ノ他ノ榮典ヲ授與ス
第十六條 天皇ハ大赦特赦減刑及復權ヲ命ス
第十七條 攝政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
攝政ハ天皇ノ名ニ於テ大權ヲ行フ
第二章 臣民權利義務
第十八條 日本臣民タルノ要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第十九條 日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ應シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得
第二十條 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ從ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第二十一條 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ從ヒ納税ノ義務ヲ有ス
第二十二條 日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ居住及移轉ノ自由ヲ有ス
第二十三條 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問處罰ヲ受クルコトナシ
第二十四條 日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ權ヲ奪ハル丶コトナシ
第二十五條 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索セラル丶コトナシ
第二十六條 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ祕密ヲ侵サル丶コトナシ
第二十七條 日本臣民ハ其ノ所有權ヲ侵サル丶コトナシ
公益ノ爲必要ナル處分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル
第二十八條 日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス
第二十九條 日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス
第三十條 日本臣民ハ相當ノ敬禮ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ從ヒ請願ヲ爲スコトヲ得
第三十一條 本章ニ掲ケタル條規ハ戰時又ハ國家事變ノ場合ニ於テ天皇大權ノ施行ヲ妨クルコトナシ
第三十二條 本章ニ掲ケタル條規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴觸セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス
第三章 帝國議會
第三十三條 帝國議會ハ貴族院衆議院ノ兩院ヲ以テ成立ス
第三十四條 貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及敕任セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十五條 衆議院ハ選擧法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第三十六條 何人モ同時ニ兩議院ノ議員タルコトヲ得ス
第三十七條 凡テ法律ハ帝國議會ノ協贊ヲ經ルヲ要ス
第三十八條 兩議員ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得
第三十九條 兩議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同會期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス
第四十條 兩議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採納ヲ得サルモノハ同會期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス
第四十一條 帝國議會ハ毎年之ヲ召集ス
第四十二條 帝國議會ハ三箇月ヲ以テ會期トス必要アル場合ニ於テハ敕命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ
第四十三條 臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常會ノ外臨時會ヲ召集スヘシ
臨時會ノ會期ヲ定ムルハ敕命ニ依ル
第四十四條 帝國議會ノ開會閉會會期ノ延長及停會ハ兩院同時ニ之ヲ行フヘシ
衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停會セラルヘシ
第四十五條 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ敕命ヲ以テ新ニ議員ヲ選擧セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ
第四十六條 兩議院ハ各々其ノ總議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第四十七條 兩議院ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第四十八條 兩議院ノ會議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ祕密會ト爲スコトヲ得
第四十九條 兩議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得
第五十條 兩議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得
第五十一條 兩議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノ丶外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
第五十二條 兩議院ノ議員ハ議院ニ於テ發言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ處分セラルヘシ
第五十三條 兩議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内亂外患ニ關ル罪ヲ除ク外會期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラル丶コトナシ
第五十四條 國務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及發言スルコトヲ得
第四章 國務大臣及樞密顧問
第五十五條 國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
凡テ法律敕令其ノ他國務ニ關ル詔敕ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス
第五十六條 樞密顧問ハ樞密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ應ヘ重要ノ國務ヲ審議ス
第五章 司法
第五十七條 司法權ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十八條 裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ處分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
懲戒ノ條規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第五十九條 裁判ノ對審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判所ノ決議ヲ以テ對審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第六十條 特別裁判所ノ管轄ニ屬スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第六十一條 行政官廳ノ違法處分ニ由リ權利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ屬スヘキモノハ司法裁判所ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス
第六章 會計
第六十二條 新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ變更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
但シ報償ニ屬スル行政上ノ手數料及其ノ他ノ收納金ハ前項ノ限ニ在ラス
國債ヲ起シ及豫算ニ定メタルモノヲ除ク外國庫ノ負擔トナルヘキ契約ヲ爲スハ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ
第六十三條 現行ノ租税ハ更ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限ハ舊ニ依リ之ヲ徴收ス
第六十四條 國家ノ歳出歳入ハ毎年豫算ヲ以テ帝國議會ノ協贊ヲ經ヘシ
豫算ノ款項ニ超過シ又ハ豫算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝國議會ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第六十五條 豫算ハ前ニ衆議院ニ提出スヘシ
第六十六條 皇室經費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年國庫ヨリ之ヲ支出シ將來增額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝國議會ノ協贊ヲ要セス
第六十七條 憲法上ノ大權ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ屬スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝國議會之ヲ廢除シ又ハ削減スルコトヲ得ス
第六十八條 特別ノ須要ニ因リ政府ハ豫メ年限ヲ定メ繼續費トシテ帝國議會ノ協贊ヲ求ルコトヲ得
第六十九條 避クヘカラサル豫算ノ不足ヲ補フ爲ニ又ハ豫算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル爲ニ豫備費ヲ設クヘシ
第七十條 公共ノ安全ヲ保持スル爲緊急ノ需用アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝國議會ヲ召集スルコト能ハサルトキハ敕令ニ依リ財政上必要ノ處分ヲ爲スコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ次ノ會期ニ於テ帝國議會ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第七十一條 帝國議會ニ於テ豫算ヲ議定セス又ハ豫算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ豫算ヲ施行スヘシ
第七十二條 國家ノ歳出歳入ノ決算ハ會計檢査院之ヲ檢査確定シ政府ハ其ノ檢査報告ト倶ニ之ヲ帝國議會ニ提出スヘシ
會計檢査院ノ組織及職權ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第七章 補則
第七十三條 將來此ノ憲法ノ條項ヲ改正スルノ必要アルトキハ敕命ヲ以テ議案ヲ帝國議會ノ議ニ付スヘシ
此ノ場合ニ於テ兩議院ハ各々其ノ總員三分ノ二以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多數ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ爲スコトヲ得ス
第七十四條 皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス
皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ條規ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十五條 憲法及皇室典範ハ攝政ヲ置クノ間之ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十六條 法律規則命令又ハ何等ノ名稱ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ總テ遵由ノ效力ヲ有ス
歳出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ總テ第六十七條ノ例ニ依ル