2011年5月17日火曜日

政府が「食べ物の自由」を奪う~食品安全近代化法の修正案はブタに口紅~

筆者(訳者)の公開方針に従って引用させていただきました。
オリジナルはこちらです。
http://tamekiyo.com/documents/others/s510radyananda.html

政府が「食べ物の自由」を奪う~食品安全近代化法の修正案はブタに口紅~


THE FOOD SAFETY MODERNIZATION ACT: THE US GOVERNMENT'S ASSAULT ON "FOOD FREEDOM"


レイディ・アナンダ
By Rady Ananda
2010年11月23日

 食品安全近代化法(Food Safety Modernization Act、上院510法案)に対する反対派の意見も操作されており、テスター修正案によって、可決されるべき法律に昇格したような印象をアメリカ人に与えたがっている。テスター修正案は、頭部の傷にバンドエイドを貼るようなものである。米国史上で最も殺人的(リーサル)な政府機関〔訳註:FDAのこと〕が、農場から食卓まで食糧供給の支配を握ることを、この修正案では止めることはできない。
 現在、巨大アグリビジネスが510法案に反対しているが、我々は引き続きこの法案に反対しなければならない。これは連邦政府による食糧の自由への攻撃である。アグリビジネスは、テスター修正案に盛り込まれた適用除外には、常に反対してきた。アグリビジネスが反対している現在の510法案にはこれが盛り込まれた状態であり、彼らはわずかな競争の余地さえ残したくないことが明白になっている。だが、この修正案により、アグリビジネスが突然510法案に反対し始めたことで、人々は510法案に間違った安心感を抱くように誘導されている。
 テスター修正案は、ブタ(貪欲な人)に口紅を塗るようなものだ。依然としてブタはブタであり、始末しておく必要がある。
 テスター修正案は、まったく十分な内容ではない。ドルが崩壊すると、一年当たり50万ドルがどれほどの価値になるというのか? 50万ドルとは、この修正案で適用除外となる食糧生産者の収入限度である。そして、適用除外といっても、食糧安全計画の提出義務を免除されるだけのことだ。法案にあるそれ以外のことは、適用除外にならない。小規模な生産者は、510法案で提案されている過激な規制によって全滅することになるだろうし、適用除外にならない中規模の生産者もそうだろう。歴史は繰り返す。中小規模の食肉加工業者は、食品安全を擬装して採用されたビル・クリントンのHACCP計画( Hazard Analysis Critical Control Point)〔原材料の仕入れから、調理、保管、出荷までの食品製造工程全般において、いくつかの重要管理点を設定し、病原菌や異物の混入などの危険を発見・分析・記録していく食品衛生管理システム〕によって滅びた。だが、それで食肉が安全になったわけではない。食肉加工業者の数が減った(独占が進んだ)だけである。
 Michael Vail(Blacklisted Newsの編集長)は、食品の兵器化のことを述べている。「兵器としての食糧と言えば、我々に供給されている食糧で遺伝子実験が行われていることを考えてみるべきだ。最近、バイオテクノロジーが立ち上げた数多くの団体が、コメにコレラのワクチンを入れ、アフリカ人を実験ネズミの代わりに使っている。クローン牛や、毎年のワクチン製造のために遺伝子組み換えされた牛のTボーン(骨付き)ステーキを食べてみたい人はいるだろうか?」
 マイク・アダムス(Mike Adams)は、FDAがアメリカ国民の食糧供給を「保護」する政府機関では間違ってもないことを示すために、FDAの行動をまとめている。「FDAは、世界の歴史で発生したすべてのテロ事件の死者数合計よりも、はるかに多くのアメリカ人の死亡の原因となっている」と述べ、何万人もの死者をもたらしたFDAが承認した医薬品の事例をいくつか挙げている。その一つ(Vioxx)だけで、ベトナム戦争で死亡したアメリカ人よりも、多くの人々が殺されている。また、FDAが、巨大製薬会社の利益のために、自然療法の情報源が発信する栄養情報を犯罪扱いしてきた経緯を示している。さらに、「FDAは、米国の歴史で存在した最も致死的な政府機関」であり、「過去20年間にわたり、FDAは、第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、さらに昔の南北戦争まで合計した死者数以上のアメリカ人を殺してきた」と述べている。
 また、FDAは、ナノ粒子を食品に入れることも承認(規制の対象にしない形で)している。ナノ粒子は、1メートルの10億分の1である。この微小な粒子は、血液脳関門を突破することができるため、深刻な健康リスクを抱えている。健康への影響を検証することなく、そして食品の安全に奉仕することなく、FDAは、こうした混入物が食品に入ることに目をつぶっている。
 510法案の「食品安全近代化法」という名称であるが、FDAにとって「近代化」という言葉には、医薬品(抗生物質など)、化学物質(塩素など)、他の生物の遺伝子、その他企業が利益のために新たに製造する物質なら何であれ、こうした物質を全食糧供給に混入させるよう全国民に義務付ける意図がある。食糧生産者に農薬の使用が強制され、それを我々は食べることで害を被ることになる。照射殺菌が強制され、それが全生産者が従うべき「安全」基準になるだろう。
 510法案の追跡可能性(生産履歴管理)義務では、ナノ・トレーサーなどの技術(機器)を食品に組み込み、人間の胃の中の食品の生産履歴が追跡できる状態にすることが示唆されている。この暗黒のシナリオがすぐさま実行されることはないとしても、食品追跡義務に必要な書類作成の負担によって中規模の生産者や流通業者は壊滅的になるだろう。あなたの私的なフード・クラブの顧客リストを、(FDAが利益を代表する)競争相手に差し出さないといけない状態を想像してみてほしい。何十億ドル規模の巨大企業が、妨害して、あなたの小さな事業を駆逐するのは、いとも簡単ではなかろうか?
 510法案により、自然の正常な食品は、犯罪になる。すでに現在でも、ライト・カウンティ・エッグ(Wright County Egg)のような大企業が何十年も汚染食品を販売するのを放置しておきながら、自然食品の生産者や流通業者に食品の強制捜査が入っているので、これはわかったことだ。FDAに更なる16億ドルが与えられ、完全な食糧支配権が与えられるのを待つまでもなく、この「正常な食品との戦争」はすでに始まっている。
情報操作された反対派がテスター修正案で510法案の問題がすべて解決されるとアメリカ国民を説得しようとしているが、多くの「食品の自由」活動家は、これが煙幕に過ぎないことに気付いている。編集者に届いた一通の手紙は、「私の凍てついた手からカブを奪い取るがいい」と題してあった。大々的に喧伝されている「適用除外」は、510法案が持つ以下のような数多くの深刻な問題から目を逸らすものである。


・食品安全の本当の問題の解決になっていない。本当の問題は、中央集約、工業化された食品供給体制にある。
・国際条約、貿易協定が、国内法よりも優先されることになっている。
・食品の生産・流通がなされる文化的に適切な法的基盤を州が決定する権限を奪うものである。
・食品規制の執行権限をFDAから国土安全保障省に移すことになる。自由を抹殺し、子供に性的いたずらをするTSA(運輸保安局)を所轄し、ハリケーン・カトリーナの被害では悲惨な対応を行い、メキシコ湾で継続中のBP災害からは目を逸らした(これは大量虐殺に相当する行為)国土安全保障省である。
・失敗し、破滅をもたらしたHACCPを全食品に拡大するものである。HACCPが食肉製造に対して行ったこと(中小規模の食肉加工業者が排除された)が、全食品に拡大され、地域の食糧生産や農業に対してなされる恐れがある。
・FDAの権限を大幅に増強することになる。FDAは、公式記録された発表で、アメリカ国民には「自らの身体の健康に対する基本的権利」は無く、「希望する食品を入手するという基本的権利は無い」と述べた政府機関である。


 あなたは、自分のダイアモンドを、そのダイアモンドの所有権があなたには無いと考えている他人に預ける気になるだろうか? 明らかに、FDA(特に510法案)は、「フル・スペクトラム・ドミナンス」(完全支配)として知られる計画の下に推進されている全体主義的な警察国家の要である。
 最後に、我々を騙して押し付けようとしている、この食品「安全」法の制定の背後には、モンサントがいることを忘れてはいけない。米国の農務長官が、かつて、「バイオテクノロジーの支配人・オブ・ザ・イアー」とあだ名されたことを忘れてはいけない。オバマ大統領が、GMOと農薬の推進者を米国の農業貿易代表に任命したことを忘れてはいけない。また、オバマが、モンサントの擁護者エレナ・ケイガン(Elena Kagan)を米国の最高裁判所判事に任命し、元モンサントの弁護士クラレンス・トーマス(Clarence Thomas)と一緒に裁判所に座っていることも、忘れてはいけない。
 ウィリアム・イングドールは、その著”Seeds of Destruction”(邦訳は、『ロックフェラーの完全支配・アグリスーティカル編』)で、「一九七〇年代半ばに、ロックフェラー家とその組織の子分ヘンリー・キッシンジャー国務長官は、食糧を支配すれば、人々を支配できると語った」と警告している。
 その同じ顔ぶれが、食品の「安全」を装って、そのような支配権力を握ろうとしている。決して誤解してはならない。FDAと510法案のような法律は、食品を「管理・支配」するためにあるのであって、「安全」のためにあるのではない。もし安全のためならば、家畜の集中給餌操業を禁止する法律が制定されるはずであり、抗生物質の無差別な使用が禁止されるはずであり、農薬やBPAが禁止されるはずである。だが、そうなっていないのは、FDAがもはや食品安全のための組織ではなくなっているからである。FDAは、完全に巨大製薬会社、巨大食品会社、巨大化学会社に生け捕りになった連邦機関なのである。
 現在、アグリビジネスがテスター修正案に反対しているからという理由で、マスコミや食品団体が510法案を支持すべきと主張しているのは、多くの人々を騙す行為になる。そうではなく、我々はしっかりと意志を強固にして510法案そのものを拒否すべきである。
上院の票決は、今後数日内になされる予定である。The Atlanticにコメントを書いて、なぜテスター修正案があっても我々が510法案に反対しているのか、Marion Nestle〔訳註:食品安全の観点からこの法案に賛成しているおめでたい栄養学者のようだ〕に教えてあげよう。それよりも、上院議員に伝えることが重要だ。


(翻訳:為清勝彦 Japanese translation by Katsuhiko Tamekiyo)


関連情報


原文 The Food Safety Modernization Act: The US Government's Assault on "Food Freedom" Tester Amendment to food ‘safety’ bill puts lipstick on a pig (Global Search)
家庭菜園と種子の自家貯蔵を違法化する食品安全近代化法の票決迫る!


こんなことが公の場で堂々と行われていることに驚きませんか?
とかく国防というと、軍事的なことに目が行きがちですが、戦闘機を操縦するのも、軍隊を動かすのも、軍人も食べ物がないと戦えませんよね。

外国の軍艦が領海に入ってきた、外国の戦闘機が領空侵犯した、米軍の基地に反対するなどの軍事的な現象には反応しますが、お金を出しても食べ物が買えないという状況になったときのことを考えると寒気がしてきませんか?

しばしば農業の近代化という言葉で「大規模農業」「機械化」「投資拡大」といった誘い水が使う学者や評論家がいますが、大規模農業の裏には資本による独占、機械化の裏には農薬の大量使用、投資拡大の裏には農作物への投機増加といった罠がしかけられていることがあります。近代化というと良さそうに聞こえますが、その実は違うのではないかという疑問を持ちます。

ここでは「食品の兵器化」という言葉も出てきます。

不作が続いても外国から安い農産物が入ってくれば、その国では農業生産が落ち込んでいても多くの人が食べるのに困りません。それが長く続けば、気づかないうちに農業の生産力がさらに落ちて、自国の食糧を外国に依存する状況になっていきます。
そして食糧を依存させておいて供給を断つ。
あるいは、この記事にあるように、管理統制を行って農業の自由を奪い、それによって人々を従わせる。
食糧が兵器になるんですね。

日本では今年3月の東北大地震と津波、原子力発電所の事故などによって耕作地が大きな被害に遭いました。耕作ができない、作っても売れない、耕作地が何年も放置され農業生産力が落ちる。そこにもし海外の安い農作物が入ってきたら。
これまで耕してきた耕作地に戻って、また今までのように野菜を作れるでしょうか。
この現実はとても重いものだと思います。
考えるだけで背筋が寒くなります。

でも恐れているだけではいけませんね。
生きていかねばなりません。
どうやってこの難を乗り越えるか。
知恵を出して努力する時ではないでしょうか。

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