2012年1月15日日曜日

大日本帝国憲法入門(15)

 こんばんは。今日は第40条から始めます。(ω)




 

 40条 両議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件二付各々其ノ意見ヲ政府二建議スルコトヲ得但シ其ノ採納得サルモノハ同会期中二於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス


(口語訳)両議院は法律またはその他の案件について、各々その意見を政府に対して述べることができる。ただし、採用されなかったものについては同じ会期中に再び述べることはできない。



 これも、『日本国憲法』には同旨の規定がないものです。両議院それぞれは、法案その他の案件について、その意見を政府(内閣)に対して述べることができます。政府が法案提出権を持っている半面として、帝国議会の側からも政府に対し、法案に対して意見を述べることができるということです。


 帝国議会と政府との間の、提出される法案などについての事前調整について定めたものということができるでしょう。


 また、三権分立に基づき、間接的に政府の法案提出などについて帝国議会の側から影響力を行使する趣旨でもあります。





 41条 帝国議会ハ毎年之ヲ招集ス


(口語訳) 帝国議会は毎年招集される。



 帝国議会の招集は天皇の大権に属します(第7条)。前回もお話したとおり、帝国議会は常設制ではなく、会期制を採っています。従って、招集という形式によって議会を開会し、会期の始まりとしているのです。





 42条 帝国議会ハ三箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ


(口語訳)帝国議会は三ヶ月を会期とする。必要のある場合には、勅命によってこれを延長することができる。



 会期は期日の定めがないと、事実上常設制と変わらなくなってしまう恐れがあります。これを防ぐため、予め憲法中に三ヶ月との期限を定めたものです。これは法律によって定めても問題ない事柄といえます。


 なお、会期中に開かれる通常の議会を常会といいます。





 43条 1 臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常会ノ外臨時会ヲ招集スヘシ


     2 臨時会ノ会期ヲ定ムルハ勅命二依ル



(口語訳)1 帝国議会が閉会中などの場合、緊急の必要がある場合には臨時会を招集することができる。


     2 臨時会の会期は勅命で定める。



 会期制の欠点は、議会閉会などの会期終了後において、議会を開会する根拠が失われてしまうことです。そこで、会期終了後、すなわち常会の閉会後に緊急の事情により議会を開く時には、これを臨時会として、会期制の例外として開会できるようにしたのです。





 44条 1 帝国議会ノ開会閉会会期ノ延長及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ


     2 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停会スヘシ


(口語訳)1 帝国議会の開会、閉会、会期の延長、および停会は両院同時に行わねばならない。


     2 衆議院が解散された場合、貴族院も同時に停会せねばならない。



 両議院は一体となって帝国議会を構成しています。よって、一方のみが開会されたり、閉会されるなどということは両院の一体性を損なうことになりますので、これは禁じられています。


 また、衆議院が解散されている場合には、その活動ができないわけですので、貴族院もその活動をすることは帝国議会の一体性を損なうことになります。従って、貴族院はその間停会することになるのです。





 45条 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅命ヲ以テ新二議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内二之ヲ招集スヘシ


(口語訳)衆議院が解散された場合、勅命によって新たに議員を選挙し、解散の日から5ヶ月以内に衆議院を招集しなければならない。



 衆議院が解散された場合には、選挙後5ヶ月以内に衆議院を招集すべき旨を定めています。





 46条 両議院ハ各々其ノ総議員ノ三分の一以上出席スル二非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ為スコトヲ得ス


(口語訳)両議院はそれぞれその総議員の三分の一以上の人数が出席するのでなければ、議事を審議し、議決することはできない。



 両議院の審議や議決についての定数を定めています。出席者があまりにも少ない時には、その過半数の賛成があったとはいっても、議会全体の過半数を得たとは到底言い難いこともあります。そこで、この条文は総議員の三分の一以上の出席がなければ議会の議決とは認められない、と定めたのです。





 47条 両議院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル


(口語訳)両議院の議事はその過半数で決定する。賛成、反対が同数である場合は、議長がそのいずれかを決定する。



 議事は前条のとおり、総議員の三分の一以上の人数が出席した上で、その過半数をもって決定します。


 賛否が同数である場合には、議長がその可否を決してよい、としているわけですが、伊藤博文は『憲法義解』において、「第73条の憲法改正の議事については例外である」旨を述べています。





 次回は、第48条から解説します。(ω)




 このブログはこちらからの転載です → 大日本帝国憲法入門

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