2012年1月10日火曜日

大日本帝国憲法入門(13)

 こんばんは。今日は第34条から解説します。




 34条 貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス


(口語訳)貴族院は貴族院令の定めにより、皇族・華族・勅令により任命された議員によって組織される。



 貴族院の存在意義は前回お話したように、民選議院のみによる「多数派の暴走」を抑え、国体の下における自由が破壊されることを防ぐことにあります。


 国体の護持には、このような私利私欲に左右されず、大局から国家を考えることのできる立場にある「真のエリート」と目されるべき貴族による議院が必要なのです。議会の二院制は、このように貴族院と衆議院との組み合わせによってこそ、合議制と自由保障の要請を満たすことが可能なのです。


 そう考えるならば、『日本国憲法』の衆議院と参議院の二院制は、果たしてその要請を満たしていると言えるでしょうか?


 二院制の意義は、それが平民により選挙された民選議院と、貴族階級の互選により選挙された貴族院の組み合わせにより合議制と自由保障の要請を満たすことにあります。


 そうであれば、選挙方法が異なるとはいえ、双方が民選議院である衆議院と参議院の組み合わせには「多数派の暴走」を抑え、自由を保障する機能に乏しいと言わざるを得ません。


 『日本国憲法』には大日本帝国憲法に比べ、このような致命的な欠陥もあるのです。




 35条 衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス


(口語訳)衆議院は選挙法の定めにより、公選された議員により組織される。



 一方、衆議院は民選議院として国民の中の「多数派」により構成され、貴族院とともに帝国議会を構成しますが、その暴走により自由が破壊されないよう、貴族院による掣肘を受けることとなります。




 36条 何人モ同時ニ両議員ノ議員タルコトヲ得ス


(口語訳)どの者も、同時に両方の議院の議員を兼ねることはできない。



 このように、両議院はそれぞれその果たす機能や役割を異にしています。よって、これを構成する議員が重複することは、その趣旨を損ねることになります。それゆえ、貴族院議員と衆議院議員の兼職は禁じられているのです。




 37条 凡テ法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ得ルヲ要ス


(口語訳)全て法律は帝国議会の協賛を得なければならない。


 

 第5条とも関連する条文です。立法権は天皇にありますが、「天皇は統治すれども親裁せず」ですので、実際に法律を起草し、審議して可決するのは帝国議会です。これを帝国議会が法律を「協賛する」と言います。この協賛なく、天皇が自分で決めてしまったような法律は法(憲法)に反し無効となります。天皇の立法権は、専ら第6条の裁可や公布などにおいて行使されることとなります。




 38条 両議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得


(口語訳)両議院は政府の提出する法律案を審議し、それぞれ法律案を提出することができる。



 両議院は法律案を審議し、可決することで法律案を協賛します。協賛を得ていない法律案は法律となりません。そして、法律案は議院を構成する各議員はもちろん、政府にも提出権が認められています。




 39条 両議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同会期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス


(口語訳)両議院のうち、片方において否決された法律案は、同じ会期においては再度提出して審議することはできない。



 会期とは、議会が開かれている期間のことです。議会の審議方法には会期制と常設制があります。常設制には議会での議論の常態化による政治の混乱などの弊害が一般的に指摘されています。そこで、一定の定められた期間だけ、議会を開いて審議することとしているのが会期制です。


 その限られた会期中に、一旦審議されて否決された同じ法案が何度も何度も提出されることになれば、議事は混乱し、円滑な審議は望めません。


 そこで、この条文は議事の円滑化を図り、審議の進行を守るため、一度否決された法律案を同じ会期中に再度提出することはできない、と定めたのです。これを「一事不再議の原則」といいます。


 実は、この「一事不再議の原則」は『日本国憲法』には定められていないのですが、『日本国憲法』下の国会審議においても守られています。帝国憲法の規定が現在でも生きて遵守されている、一つの例です。




 次回は第40条から解説します。( ω)




 このブログはこちらからの転載です → 大日本帝国憲法入門

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