2011年11月16日水曜日

大日本帝国憲法入門(9)自由権について(ΦωΦ)

 こんばんは(ΦωΦ)

 今日は、国体の下に認められる様々な自由についてお話します。

 自由(権利)はいくつかに分類することができます。ここでは特にその根幹をなす3つのジャンル、精神的自由と人身の自由、そして財産権の保障について説明します。



 1 精神的自由

 私たちは一人一人が異なった性格、能力などを有し、そしてそれを生かして働くことで国家に貢献しています。このような一人一人の働きによって国家は興隆し、国体は保守されます。

 国体の保守にとって、一人一人が自分の能力に応じてそれを発揮し、自由にそれを発展させて努力していくことが大切なことは言うまでもありません。各人はその自由な競争によって、己を幸福にし、ひいては国体をも強固にしていくのです。

 このような各人の自由な競争による国体の保守のためには、その能力を存分に発揮する環境が必要です。ここに臣民はその能力を発揮するべく、様々な精神的自由を保障されるのです。

 例えば、第29条では前回もお話した「言論の自由」を定めています。これは精神的自由の中でも最も重要なものです。人は自分の頭で様々なことを考え、学び、それを様々な場で生かすことで国家に貢献します。自由に物事を考え、発表し、それを仕事に生かし、時には時の政権を批判するようなことが保障されていなければ、人は己の能力を伸ばしていくことはできず、国家は沈滞し、また批判を受けない政権は傲慢に、専断的になっていくでしょう。これこそは国体破壊につながる恐るべき事態です。

 そこで、大日本帝国憲法においては言論の自由の他、いくつかの精神的自由を成文化して保障し、もって国体の護持を図っているのです。



 2 人身の自由

 しかし、いくら自由が保障されているといっても、例えば時の政権を批判したばかりに何の罪もないのに言いがかりをつけられ、有無を言わせず逮捕され、有罪とされてしまった、というのでは話になりません。それでは、いくら言論の自由があるといっても何の意味もないことです。

 そこで、これをカバーしているのが人身の自由です。第23条では逮捕されたり処罰を受けるなどの場合には、必ず法律に定めた手続きを官憲の側が踏んでいなければならない、ということを定めています。証拠もないのに逮捕したり、裁判で有罪にしてはいけません、ということです。英米法ではこれを「適正手続の原理」といいますが、大日本帝国憲法も同様の事柄を定めています。

 このようにして、時の政権が臣民の自由を奪って好き勝手なことができないように、様々な工夫が凝らされているのです。



 3 財産権の保障

 更に、人が暮らし、そして自由に考え、活動する上で欠かせないのがその財産です。財産があってこそ人は安定した生活を営んでいくことができます。そして、考えてみて下さい。もしも時の政権が、好き勝手に気に入らない者の財産を没収できるのであれば、人は自由に物を考えたり、発言したり、政権を批判したりできるわけがありません。

 こうして、国体を保守していくためには臣民が各々の財産権を保障され、もしもやむを得ず没収するには、法律に定められた手続きを踏んでしか没収することはできない、とされているのです。



 4 自由権の保障のない国は、全体主義国家

 以上、お気づきになったかもしれませんが、これらの国体の下の自由こそ、国体を護持していく上で必要不可欠なものであるとともに、いわゆる全体主義(社会主義・共産主義や国家社会主義など)の国家においては保障されていないのです。

 全体主義国家においては、統治する者やグループの意思や命令こそが法律です。そこでは道徳や慣習などは悪しきものとして顧慮されません。立憲主義(法の支配)は存在しないのです。統治者やグループの意思に全国民が従うことに価値が置かれ、それに従わない国民には自由や権利はないものとして扱われてしまいます。

 18世紀のフランス革命から、20世紀においてはファシズムや共産主義により、そして現在に至るまで、全体主義国家は自国民の自由を奪い、他国をも侵略し、圧政を敷いています。

 我が国の国体はこれらの諸国とは異なり、古来の立憲主義を今に伝えてその自由を大日本帝国憲法に成文化しています。

 



 第22条 日本臣民ハ法律ノ範囲内二於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス

(口語訳)日本国の臣民は法律に定められた範囲内で、居住と移転の自由を有する。


 人が様々な活動をしていく上で、その居所を変え、自分の望む場所に住まうことは必要になってきます。この条文は、それまでの時代において一定の制限を受けていた居所の変更やその選択の自由を、法律の制限の下に原則として自由化することを規定したものです。



 第23条 日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ

(口語訳)日本国の臣民は法律の定めによらないで、逮捕・拘留・裁判・処罰を受けることはない。


 人身の自由を定めたものであることは先ほどお話しました。法律に従って逮捕や裁判などが行われなければ、人は自由に生活していくことはできません。自由を重んずる国家と全体主義国家とを分つ、非常に重要な規定です。例えば、逮捕時には原則として逮捕状が必要である、という法律はこの条文に基づきます。



 第24条 日本国臣民ハ法律二定タメル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権利ヲ奪ハルルコトナシ

(口語訳)日本国の臣民は、法律に定められた裁判官による裁判を受ける権利を奪われることはない。

 
 前条と同様の趣旨で、裁判や判決も法律に従って行われなければならず、好き勝手にされてはならない、ということです。自由を保障する上で、欠くことのできない重要な規定で、第23条とともに適正手続の原理を定めたものです。例えば、刑事裁判においては被告人は国選弁護人を依頼できる、という法律はこの条文に基づきます。



 第25条 日本臣民ハ法律二定メタル場合ヲ除ク他其ノ許諾ナクシテ住所二侵入セラレ及捜索セラルルコトナシ

(口語訳)日本国の臣民は、法律に定めた場合を除いては、その許可なく住居に入られ、捜索を受けることはない。


 これは刑事事件の被疑者とされた場合などに、証拠などを押収するため住居に入るには、例えば捜索令状を必要とする、などの法律に定めた手続きによらなければならない、という趣旨です。勝手に人の家などを捜索され、所有物を没収されてはその人の財産権などが侵害されることになります。そのようなことを防ぐ趣旨の規定です。


 
 次回は第26条から解説します。


 このブログはこちらからの転載です → ブログ『大日本帝国憲法入門』

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